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教師たちの囁き—恋と勇気の一歩

舞踏会も後半。

シャンデリアの光は少し落とされ、会場はしっとりとした雰囲気に包まれていた。

舞台袖で見守る教師たちの姿がある。

赤髪を揺らすイレーネが、挑発的に笑った。

「まったく……あの王子様、もどかしいわねぇ」

「イレーネ先生」

保健医セラフィーナが苦笑しながらも頷く。

「でも、今の一歩が未来を変えるのは確かです。無理をしなくても、歩き出すだけで」

銀灰の髪を撫でつけるカミルは、真剣な横顔で言葉を添える。

「勇者であろうとなかろうと……彼には、あの子の隣に立つ権利がある」

三人の視線の先には――踊らずに立ち尽くすアルトとアマネの姿。

「……アルト君」

不意に耳元で囁かれた声に振り返ると、そこにイレーネが立っていた。

「好きなら行きなさいな。舞踏会はね、告白よりずっと正直なものよ」

挑発的な笑みとともに、背中を軽く押される。

「えっ……」

頬を赤く染めたアルトは、一瞬迷ったが――深呼吸をして、足を踏み出した。

「アマネ……」

「えっ、アルト?」

差し出された手に、アマネはきょとんとしながらも、小さく笑ってその手を取った。

二人が中央に出ると、会場のざわめきが静まる。

音楽が流れる。

アルトは少しぎこちなくも、丁寧にアマネをリードした。

アマネはその不器用さに思わず微笑み、楽しげに踊り始める。

「アルトって……真剣なんだね」

「当たり前だろ……。君と踊ってるんだから」

その言葉に、アマネの頬がほんのり赤く染まった。

本人はまだ恋だと気づいていない。けれど――アルトの胸には確かに熱が宿っていた。

(勇者でなくても……俺は、君の隣を歩きたい)

音楽が終わると同時に、二人の姿は温かな拍手に包まれた。

勇者候補と少女ではなく、一人の少年と少女として。

そこにあったのは、立場を超えた純粋な青春のきらめきだった。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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