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繋がる声—未来の約束

学園の夜。

月明かりが照らし、涼しい風が木々を揺らしていた。

ミナは手元の小さな金属片をじっと見つめていた。

「……そういえば」

ふっと思い出したように声を漏らす。

「これ、夏休み前に作ったままになってたのよね」

掌に乗せたのは、小さな通信機の試作品。

指先で軽く調整し、耳に当てると――。

『……ミ、ミナ? 聞こえるか?』

ノイズ混じりの声が飛び込んできた。

「ジーク!」

思わず顔を明るくする。

「ちょっと! ちゃんと動いたわ!」

『いや、途切れ途切れで……おい、今の聞こえたか?』

「大丈夫、聞こえてる!」

ふたりの声は、時折ノイズに遮られながらも確かに繋がっていた。

短いやり取りの後、ミナはふと真顔になる。

「ねえ、ジーク」

『ん?』

「……やっぱり、親には言わなきゃと思うの。私たちのこと」

しばし沈黙が落ちる。

ノイズがまた混じり、ジークの息づかいだけがかすかに聞こえる。

『……逃げる気はない』

やがて返ってきた声は、低く真剣だった。

『きちんと向き合うよ。お前の親御さんにだって、俺の言葉で話す』

「……ジーク」

胸が熱くなり、思わず握りしめる手に力が入る。

だが――。

『だから、将来は――……剣だけじゃ……なく……』

「えっ? ジーク? 聞こえない! 今のとこ一番大事だから!」

慌てるミナの声に、またノイズが重なった。

次の瞬間、通信機越しに短く響く。

『……直接言う。待っててくれ』

ミナは思わず立ち上がった。

胸の鼓動が早鐘のように鳴る。

やがて、夜の庭に現れたジーク。

現れた姿は、月明かりに映えて凛々しく見えた。

「ごめん、待たせたな」

「全然」

ミナは笑みを浮かべる。けれど声は少し震えていた。

ジークは深呼吸し、まっすぐ彼女を見つめた。

「……俺は、ただ剣を振るって生きるんじゃない。

市民も、貴族も……誰もが対等に力を発揮できる場所を作りたいんだ」

その言葉に、ミナの瞳が大きく揺れる。

「それ……それをお父様に言ったら、すごく喜ぶと思う」

頬がほんのり赤らんだ。

ジークは照れくさそうに頭を掻き、しかし視線は逸らさなかった。

「なら……なおさら、言わなきゃな」

二人の間に、静かな確信の光が生まれていた。

部屋に戻ったミナは、改めて通信機を手に取った。

「……これ、ちゃんと完成させなきゃ」

夜空を見上げながら、小さく呟く。

心も道具も――確かに「繋がる」ために。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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