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下着選びは乙女の戦場

学院の朝。

窓から差し込む陽射しに、寮の部屋はほんのり暖かさを帯びていた。

「――今日は下着を買いに行く!」

唐突に宣言したのは、ベッドの上で跳ね起きたミナだった。

「えぇっ!?」

アマネとリュシアの声がハモる。

「この前のお泊まり会で約束したでしょ!リュシアの分も揃えなきゃって!」

「う……あれは……」

リュシアの頬が赤くなる。確かにあの夜、女子だけの秘密トークで話題に出たのだ。

「普段は制服で隠れてる部分だけど、だからこそ気を抜いちゃダメなのよ! 女子力ってやつ!」

ミナは両手を腰に当てて胸を張る。

アマネは顔を赤くしながら「武具屋の方が落ち着く……」と小声で呟いた。

リュシアは目を伏せつつも、小さく頷く。

こうして三人の休日は、街の下着専門店へと向かうことに決まった。

王都の商業区。

色とりどりの布地が並ぶ店先は、いつもと違う雰囲気で賑わっていた。

「わぁ……」

リュシアが思わず声を漏らす。

「見て!このレース!繊細なのに丈夫!技術力がすごい!」

ミナは目を輝かせながら棚を物色している。

「えぇと……こんなに種類があるの……?」

アマネは戸惑いながらハンガーに掛けられた下着を見比べていた。

「下着って、誰かに見せるためのものじゃなくてもいいの?」

リュシアが恐る恐る問いかける。

「もちろんよ!」ミナは即答した。

「大事なのは自分の気分! 素敵なのをつけると、それだけで一日がんばれるの!」

その時――。

「アーマーネちゃーん!」

甲高い声とともに、後ろから抱きつかれる。

「ひゃっ!? クラリス先輩!」

振り向くと、金髪を優雅に揺らすクラリスが満面の笑みで立っていた。

「まぁまぁまぁ!下着を選びに来たのね? 素晴らしいわ!だって下着は――戦闘服よ!」

「せ、戦闘服……?」

アマネは呆然と繰り返す。

「そう!誰かのためじゃなく、自分を奮い立たせるための最前線!心の鎧!女の秘密兵器よ!」

「……そんなこと言うお客様、時々いますね」横で店員が小声でフォローする。

試着室に入った三人は、交代で鏡の前に立った。

「ど、どうかな……?」

カーテンを開けたリュシアは、淡い水色のレースを身に纏っていた。清楚な彼女にぴったりの色。

「……大人みたい」リュシアが小さく呟く。

「すごく似合ってる!」アマネが即答すると、リュシアは顔を真っ赤にした。

「じゃーん!」

次に飛び出してきたのはミナ。鮮やかな赤の下着に手を腰に当ててポーズを決める。

「どう?情熱的でしょ!」

「うわぁ……ジークが見たら泣いて喜ぶわ!」クラリスが容赦なく爆弾を投下。

「せ、先輩!やめてください!」ミナが慌ててカーテンを閉める。

最後はアマネ。

白地に小花模様の可憐なデザイン。

「……やっぱり恥ずかしい」

そう言いながらも、鏡に映る自分をちらりと見つめて、胸の奥がほんのり熱くなるのを感じた。

「アーマネ、似合ってる!」リュシアが言い、ミナも「間違いなく女子力アップだね!」と太鼓判を押す。

アマネは頬を赤らめて「……ありがとう」と小さく返した。

買い物を終えて街を歩く三人。

紙袋を抱えて、どこか誇らしげだった。

「なんだかちょっと大人になった気がするね」アマネが呟く。

「……私も。自分のために選んだのは、初めてだから」リュシアが微笑む。

「ほらね!女子力ってそういうことなのよ!」ミナが得意げに言った。

夕焼けの空の下、三人の笑い声が響いた。

その背中には、昨日までより少し大人びた影が重なっていた。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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