仲良し三人娘の再会—恋と声と
学園にリュシアが戻ってきた。
その知らせを聞いたアマネとミナは、思わず抱きつくように迎え入れた。
「よかった……ほんとに、戻ってきてくれて!」
「寮の部屋がやっと揃った感じするわ!」
涙ぐみながら笑う二人に、リュシアは少し照れながらも「ただいま」と返した。
その言葉だけで、三人の胸の奥に溜まっていた不安はほどけていった。
◇
夜、寮の一室。
お泊まり会のように部屋着で集まった三人は、枕を抱え込みながら語り合っていた。
「……それにしても、庵での告白はすごかったよね」
アマネがクッションに頬を押しつけながら、ぽつりと切り出す。
「ミナが“ジークのこと好き!”って、あんな堂々と……」
「や、やめてよぉ!」
ミナは慌てて枕で顔を隠した。
「今思い出しても心臓バクバクするんだから!」
「でも、すごく素敵だった」
リュシアは微笑んで、二人を見つめる。
「……私もね、カイルのこと……好きかもしれない」
不意に告げられたその言葉に、部屋の空気がふわりと変わった。
「えっ」
アマネとミナが同時に目を見開く。
「だって……あの時、教会で私を見て、必死に声を届けようとしてくれた。
あの姿を思い出すと……胸があったかくなって……」
リュシアの頬がかすかに赤く染まった。
「リュシア……」
ミナが枕をぎゅっと抱き直す。
「それ、立派な恋だよ」
「……そっか」
リュシアが小さく笑った。その笑顔は“人形”だった頃には見せられなかったもの。
◇
「ねぇ、アマネ」
今度はミナが少し声を潜める。
「アルトのこと……気づいてる?」
「えっ?」
リュシアも小さく頷いた。
「うん。あの人の視線……あなたを見てる時だけ違う」
アマネはぽかんと二人を見返す。
「え、えぇっ!? そ、そんなの……」
頬が熱くなり、言葉に詰まった。
「でもね」
リュシアが穏やかに続ける。
「アマネがどう思うかが一番大事。……無理に答える必要はないのよ」
「う、うん……」
アマネは枕を抱えたまま、視線を落とした。
――“そんな風に見られてたの?”
胸の奥が、妙にざわついていた。
◇
三人の笑い声と小さな秘密は、夜の学園に溶けていった。
友情の中に、それぞれの「恋の芽」がそっと息づき始めていた。
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