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囁かれた声—聖女との面談

白い石の部屋に、硬質な静けさが漂っていた。

中央に立つリュシアは、修道服の裾を揃え、形式通りの姿勢で手を組んでいる。

その表情は淡々として、感情の影が薄い。

「……聖女候補、リュシア・カーディナルです。ご用件は」

どこか遠くから響くような、無機質な声。

アマネたちの胸に、冷たい痛みが走った。

カイルが一歩、前へ出る。

「リュシア。君に……会いに来た」

「私は聖女として、務めを果たします」

即答。まるで壁に跳ね返されたような響きだった。

だが、カイルは怯まない。

「務めだけじゃない。君は、仲間と笑って、怒って、泣いてきたはずだ」

ほんの一瞬、リュシアの瞳が揺れた。

「そうだぜ!」ジークが低く声を張った。

「お前が怒ってくれたから、俺は無茶を控えるようになった。……だから、俺にとってその声は大事なんだ」

「リュシア」アルトが真剣な眼差しを向ける。

「君の言葉に救われた人は多い。形式じゃなく、君だからこその声で」

リュシアの指が、小さく震えた。

「そうそう!」ミナが突然、明るく声を上げた。

「それに、お泊まり会の時に約束した下着、まだ買いに行けてないでしょ!?」

「……っ!!」

男子陣(ジークとアルト、ついでにカイルまで)が一斉に顔を真っ赤にする。

「な、なに言ってんだお前は!」

「……そういうことは場を考えろ」

小さな笑いが、部屋の張りつめた空気をほんの少しだけ崩した。

リュシアの唇がかすかに緩む。

最後に、アマネが静かに言葉を紡いだ。

「……リュシアさんの笑顔は、光なんです。

その光に、私も……みんなも、救われてきたんです」

その声は真っ直ぐで、優しかった。

リュシアの目から、ふっと涙がこぼれ落ちる。

「……私は」

掠れるような声が、沈黙を破った。

「……私は、私でいても……いいのですか?」

部屋の隅で控えていた審問官たちがざわめいた。

「聖女が……己の声を?」

「あり得ぬ……」

だが、その光景を前に、カイルの心は揺るがなかった。

(聞こえた……彼女自身の声が)

彼は強く拳を握りしめる。

(必ず……君を人に戻す。たとえどんな壁があろうとも)

涙を浮かべたリュシアの表情には、初めて人間らしい弱さと、救いを求める影が宿っていた。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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