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潜入—修道院の闇へ

夜。

月明かりを背に、六人とアメリアは修道院の裏門へとたどり着いていた。

外から見れば厳かな聖域。けれど、その石壁に映る影はどこか冷たく、不穏な気配が漂っている。

「……ここから先は、私もついていけない」

アメリアが低い声で告げる。

「だが、裏通路は確かに存在する。古い祈祷室へ通じる階段を下れば、修道院の中心部に入れるはず」

カイルが一歩前に出て頷いた。

「ありがとうございます、マザー・アメリア。……必ず、リュシアを連れ戻します」

通路の入口は、苔むした石壁の隙間にあった。

ジークが力任せに押すと、鈍い音を立てて石の一部が回転し、冷たい空気が吹き抜ける。

「隠し通路ってのは、どうしてこう不気味なんだろうな」

ジークが冗談めかして言うが、その声は少しだけ震えていた。

「平気よ」

ミナが錬金の小瓶を掲げる。

「煙幕も閃光もある。万が一、捕まっても時間は稼げる」

アルトは静かに剣の柄に手を添える。

「油断するな。……ここから先は、俺たち全員が危険に晒される」

アマネはその言葉にうなずき、胸の奥で小さくつぶやいた。

(リュシア、待ってて。必ず……)

石の階段を下りるたび、空気は湿り、冷え込んでいく。

蝋燭の明かりが遠くで揺れ、修道院の地下に広がる広間がうっすらと見えてきた。

そして――その中心に、淡々と祈りを捧げるリュシアの姿があった。

白い修道服に包まれた背中は整然としている。

だが、その声は機械のように抑揚がなく、心が抜け落ちたかのようだった。

「リュシア……!」

思わずカイルが声を上げる。

その瞬間、広間に鋭い声が響いた。

「――誰だ」

暗がりから姿を現したのは、修道院を監督する審問官たちだった。

彼らの手には聖印が光り、冷ややかな視線が仲間たちに突き刺さる。

「聖女の務めを妨げる者か。許されぬ」

仲間たちは剣や杖を構え、互いに目を合わせる。

誰も言葉にしなかったが、心はひとつだった。

――ここで引くわけにはいかない。

修道院の闇を暴く戦いが、今まさに始まろうとしていた。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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