準備の灯—仲間の決意
夜の学園の寮。
灯りの落ちた部屋に六人が集まり、机の上に広げられた紙を囲んでいた。
アメリアから得た「裏通路」の情報が、粗末な地図の形で記されている。
ジークが腕を組み、低く唸った。
「……なるほど。裏から潜れば気づかれにくいが、外れりゃすぐ修道院の兵に囲まれるな」
「でも他に道はないよね」
ミナは真剣な顔でペンを走らせる。
「私、煙幕用の錬金薬を作っておく。あれなら一瞬で視界を奪えるし、逃げる時間くらいは稼げるはず」
「僕も準備する」
カイルが静かに言った。
「教会の文書を調べて、通路の正確な位置を割り出してみる。……父に知られないように」
アルトは地図を見つめながら、静かに口を開く。
「俺は王城の方に掛け合う。表立った助力は望めないが、せめて“民衆が騒ぎ立てないよう”に調整しておく」
「わたしは……」
アマネは少し考え、拳をぎゅっと握った。
「リュシアの声を信じる。もしまた人形みたいに振る舞っていても、絶対に心を取り戻してもらうんだ」
その言葉に、皆の顔に静かな熱が宿った。
縁側の外で風が吹き抜け、障子がかすかに揺れる。
カグヤが尻尾をふわりと振り、まるで「頑張れ」と言っているかのように仲間たちを見守っていた。
◇
作戦を練り終えたあと、皆はそれぞれの思いを胸に寮へ戻っていった。
ただ一人残ったカイルは、机の上の地図をじっと見つめていた。
(……リュシア。君の声を、もう一度聞かせてくれ)
胸の奥で囁く決意は、誰にも見せないほど強く燃えていた。
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