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決意の芽

教会本部・礼拝堂。

誰もいない静寂の中、リュシアはひざまずき、形式通りの祈りを捧げていた。

「神よ……私は……」

薄く響く声は、教本に書かれた文句そのまま。

抑揚も、温もりもなく、ただ機械的に紡がれていく。

ステンドグラスの光が床に落ちる。

その色彩の中で――ふと、囁くような声が漏れた。

「……私は、私でいいの……?」

祈りとは別の、彼女自身の声。

小さく、かすれて、けれど確かに本心だった。

その言葉を聞き取ったのは――扉の影に立つ、ただ一人。

カイルだった。

(リュシア……!)

胸の奥が熱くなる。

あの冷たい形式の奥に、確かに彼女自身の声が残っている。

「必ず……君を人に戻す」

心の中で強く誓った。

それは恋慕というより、信念に近い決意だった。

学園の寮へ戻ったカイルは、仲間たちの輪の中へ歩み出た。

その表情にただならぬものを感じて、皆が視線を向ける。

「……リュシアの様子を見てきた。形式通りの祈りをしていた。でも……」

言葉を切り、カイルは強く握りしめた拳を胸の前に置いた。

「……あの中に、まだリュシア自身の声が残っていた」

仲間たちの顔に、安堵と戸惑いの入り混じった影が浮かぶ。

それでもアマネが、まっすぐに頷いた。

「だったら……まだ助けられるよね」

その言葉に、カイルの瞳が強く揺らぐ。

――自分ひとりではできない。だからこそ。

胸の奥で熱を噛みしめながら、彼は仲間たちを見渡した。

心の中で、はっきりと誓う。

(必ず……彼女を取り戻す。そのために、皆の力を借りるんだ)

静かに息を吐き、カイルは輪の中に腰を下ろした。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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