仲間の決意
秋風が吹き抜ける学園の中庭。
落ち葉を踏む音を背景に、アマネたちは集まっていた。
「……やっぱり、リュシアがおかしい」
アマネが小さな声で切り出した。
「笑ってるけど、心がそこにない感じがするんだ。まるで――」
「“人形”みてぇだな」ジークが苦々しげに呟く。
アルトは唇を結んだまま、木の枝をじっと見つめていた。
「彼女は……教会に囚われているのかもしれない」
◇
皆の視線が自然とカイルに集まる。
彼は少し考え込んでから、眼鏡を押し上げた。
「……僕の家は、教会と深い繋がりがある。
父は司法卿。僕なら、内部の記録や動きを探れるかもしれない」
「危なくない?」ミナが眉をひそめる。
「向こうだって、下手な真似をすればすぐ気づくはずだよ」
カイルはわずかに苦笑した。
「危険は承知だ。でも……僕だけが入れる場所がある。
リュシアをこのままにしておくのは、僕自身が許せない」
アマネが力強く頷いた。
「じゃあ、私たちは信じて待つ。カイルを1人にはしないよ」
ジークも拳を握りしめる。
「おう。やれることは全部やる」
アルトは静かにカイルを見つめ、短く言った。
「……頼む」
◇
夕暮れ。
仲間の輪を背に、カイルは深く息を吐いた。
胸の奥で、小さな炎が灯る。
(形式に囚われた教会の中で……僕は僕の声を届ける)
彼の決意は、静かに強さを増していった。
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