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薄れる笑顔—距離を置くリュシア

秋風が吹き抜ける学園の中庭。

石畳の上に落ち葉が舞い、空は高く澄み渡っていた。

「リュシア、今日は一緒に昼食をどう?」

アマネが声をかける。

だがリュシアは、わずかに微笑みを浮かべただけで首を横に振った。

「……ごめんなさい。用事があるの」

その声は穏やかだったが、どこか張り付いた笑顔のように見えた。

教室でも同じだった。

授業の合間、ミナが軽口を叩いても、リュシアは「ふふ」と短く笑うだけ。

ジークが冗談を飛ばしても、以前のような鋭いツッコミは返ってこない。

「……あれ?」

ミナが小声でアマネに囁いた。

「なんか、薄くない? リュシアの笑顔」

アマネは頷いた。

(うん……まるで、心の温度が消えてるみたい)

放課後。

夕陽が窓を染める廊下で、アルトがリュシアを呼び止めた。

「リュシア。最近……元気がないように見える。何かあったのか?」

リュシアは一瞬、言葉を探すように俯いた。

そしてすぐに、柔らかい微笑を浮かべる。

「……大丈夫です。アルト様。心配には及びません」

その答えは完璧すぎて、逆に胸を締めつけた。

(違う。これは……“リュシア”じゃない)

アルトは確信した。

夜。

寮の食堂に集まった五人は、互いに視線を交わし合った。

「やっぱり……おかしいよな」ジークが低く呟く。

「笑ってるのに、笑ってねぇ」

「……心が置き去りになっているようだ」カイルが静かに言った。

アマネは拳を握りしめる。

「リュシアが……戻ってしまった。人形みたいに……」

仲間の間に、重い沈黙が落ちた。

けれどまだ、この時は誰も答えを持っていなかった。

――ただ、リュシアを救わなければならないという思いだけが、五人の胸に強く芽生えていた。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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