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庵に広がる余波

庵の囲炉裏を囲んだ夕餉の席。

焼き魚の香りが漂い、味噌汁の湯気がほのかに立ちのぼる。

皆の箸が進む音とともに、昨昼の出来事――ミナの突然の告白が、自然と話題になっていた。

「ほんっと、あれはびっくりしたわ……」

アマネが頬を赤らめ、箸を止める。

「だって、あんなに堂々と……」

「勢いで突っ走るなんてな」

カイルが小さく笑い、眼鏡を押し上げる。

「でも……結果は出た。勢いも成果に繋がるってことか」

ジークは豪快に飯をかき込みながら、口元に笑みを浮かべる。

「おう。俺も驚いたけどな。でも嘘はねぇ。ああいう真っ直ぐなとこ、悪くねぇだろ」

「……俺も、頑張らないと」

アルトは箸を持つ手を見つめ、心の奥でそっと呟いた。

隣のアマネは気づかず、魚の骨を外すのに夢中だった。

「でもね」

ミナが箸を置き、ふと真剣な顔を見せた。

「今回、あたしが動けたのは……仲間のみんながいたからなんだ」

視線が集まる。

「アマネやリュシアが聞いてくれて、アルトやカイルの姿も見て……それで決心できた。

効率ばかりじゃなくて、“仲間の声を聞く”って大切なんだなって」

その言葉に、場の空気が温まる。

アサヒは湯飲みを手に微笑み「でも焦りすぎは禁物だよ。恋も料理も、じっくり味わうほうがいい」と伝え、エリシアは「羨ましいわ〜! 私も若い頃は……ふふ、秘密よ」」と冗談めかして肩をすくめた。

食事がひと段落すると、ジークが口を開いた。

「……そういや、前にお前が俺に渡した“あれ”。まだ完成してねぇんだろ」

「あれ?」

皆の視線がミナに集まる。

ミナは頬を掻き、少し照れ笑いを浮かべた。

「未完成の通信機。……ちゃんと完成させるよ。今度は、あたしのやり方だけじゃなくて、みんなの声も取り入れて」

「ほぉ」

カイルが感心したように頷く。

「それは確かに、新しい成果に繋がりそうだ」

囲炉裏の火がぱちりと音を立てる。

仲間たちの笑顔は炎に照らされて、どこか誇らしげに輝いていた。

ルシアンは多くは語らず、ただカグヤの白い毛並みを撫でていた。 だが、通信機の話題が出た時だけ視線を上げ、 「声を繋ぐ道具、か……面白いな」

――それぞれの気持ちが交わり、庵での時間はまた一歩、確かな絆へと変わっていく。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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