庵に広がる余波
庵の囲炉裏を囲んだ夕餉の席。
焼き魚の香りが漂い、味噌汁の湯気がほのかに立ちのぼる。
皆の箸が進む音とともに、昨昼の出来事――ミナの突然の告白が、自然と話題になっていた。
「ほんっと、あれはびっくりしたわ……」
アマネが頬を赤らめ、箸を止める。
「だって、あんなに堂々と……」
「勢いで突っ走るなんてな」
カイルが小さく笑い、眼鏡を押し上げる。
「でも……結果は出た。勢いも成果に繋がるってことか」
ジークは豪快に飯をかき込みながら、口元に笑みを浮かべる。
「おう。俺も驚いたけどな。でも嘘はねぇ。ああいう真っ直ぐなとこ、悪くねぇだろ」
「……俺も、頑張らないと」
アルトは箸を持つ手を見つめ、心の奥でそっと呟いた。
隣のアマネは気づかず、魚の骨を外すのに夢中だった。
◇
「でもね」
ミナが箸を置き、ふと真剣な顔を見せた。
「今回、あたしが動けたのは……仲間のみんながいたからなんだ」
視線が集まる。
「アマネやリュシアが聞いてくれて、アルトやカイルの姿も見て……それで決心できた。
効率ばかりじゃなくて、“仲間の声を聞く”って大切なんだなって」
その言葉に、場の空気が温まる。
アサヒは湯飲みを手に微笑み「でも焦りすぎは禁物だよ。恋も料理も、じっくり味わうほうがいい」と伝え、エリシアは「羨ましいわ〜! 私も若い頃は……ふふ、秘密よ」」と冗談めかして肩をすくめた。
◇
食事がひと段落すると、ジークが口を開いた。
「……そういや、前にお前が俺に渡した“あれ”。まだ完成してねぇんだろ」
「あれ?」
皆の視線がミナに集まる。
ミナは頬を掻き、少し照れ笑いを浮かべた。
「未完成の通信機。……ちゃんと完成させるよ。今度は、あたしのやり方だけじゃなくて、みんなの声も取り入れて」
「ほぉ」
カイルが感心したように頷く。
「それは確かに、新しい成果に繋がりそうだ」
囲炉裏の火がぱちりと音を立てる。
仲間たちの笑顔は炎に照らされて、どこか誇らしげに輝いていた。
ルシアンは多くは語らず、ただカグヤの白い毛並みを撫でていた。 だが、通信機の話題が出た時だけ視線を上げ、 「声を繋ぐ道具、か……面白いな」
――それぞれの気持ちが交わり、庵での時間はまた一歩、確かな絆へと変わっていく。
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