庵の団欒—火を囲んで
夜の庵。
囲炉裏の火がぱちぱちと音を立て、薪の香ばしい匂いが漂っていた。
その周りに、仲間たちと庵の人々が円になって腰を下ろしている。
アマネは慣れた手つきで椀を配り、湯気を立てる汁物を皆に渡していく。
「はい、どうぞ」
その自然な笑顔に、皆の顔がほころんだ。
リュシアはぎこちなく器を手渡しながらも、少しずつ柔らかい表情を見せている。
「……ありがとう」
その小さな声にも、温もりが宿っていた。
ジークは豪快に肉を頬張り、声を上げる。
「うまっ! やっぱり庵の飯は最高だな!」
ミナがすかさず突っ込む。
「ちょっと! お行儀よく食べなさいよ! 汁が飛んでるってば!」
カイルは眼鏡を押し上げ、真面目な顔で一口。
「学園の食堂や宮廷の宴では見ない調理法だが……食材の持ち味を最大限に引き出している。実に理にかなっているな」
「理屈で食うなよ!」
ジークが噴き出し、場の空気はさらに和んだ。
アルトはそんな光景を静かに見守りながら、胸の奥に温かいものを感じていた。
(……こうして皆で食べるだけで、心が満たされていくんだな)
◇
「ふふ……まるで家族みたいね」
セレスの姿で来ていたエリシアが、柔らかく微笑む。
「家族……」
リュシアが小さく呟き、アサヒが隣で頷いた。
「ええ。誰かを支えるのに、血のつながりなんていらないのよ」
その言葉に、アマネの胸がじんわりと熱を帯びた。
◇
その時――。
「きゅいっ!」
小さな白い影が、干物をくわえて囲炉裏の脇を駆け抜けた。
「カグヤ! また!」
アマネが慌てて立ち上がる。
白狐の小さな背中は、尻尾をふわりと揺らしながら縁側へ逃げる。
皆が笑い出し、火を囲む場は一層にぎやかさを増した。
◇
仲間以上、家族未満。
けれど確かに心を寄せ合える空気が、庵を優しく包んでいた。
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