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庵の団欒—火を囲んで

夜の庵。

囲炉裏の火がぱちぱちと音を立て、薪の香ばしい匂いが漂っていた。

その周りに、仲間たちと庵の人々が円になって腰を下ろしている。

アマネは慣れた手つきで椀を配り、湯気を立てる汁物を皆に渡していく。

「はい、どうぞ」

その自然な笑顔に、皆の顔がほころんだ。

リュシアはぎこちなく器を手渡しながらも、少しずつ柔らかい表情を見せている。

「……ありがとう」

その小さな声にも、温もりが宿っていた。

ジークは豪快に肉を頬張り、声を上げる。

「うまっ! やっぱり庵の飯は最高だな!」

ミナがすかさず突っ込む。

「ちょっと! お行儀よく食べなさいよ! 汁が飛んでるってば!」

カイルは眼鏡を押し上げ、真面目な顔で一口。

「学園の食堂や宮廷の宴では見ない調理法だが……食材の持ち味を最大限に引き出している。実に理にかなっているな」

「理屈で食うなよ!」

ジークが噴き出し、場の空気はさらに和んだ。

アルトはそんな光景を静かに見守りながら、胸の奥に温かいものを感じていた。

(……こうして皆で食べるだけで、心が満たされていくんだな)

「ふふ……まるで家族みたいね」

セレスの姿で来ていたエリシアが、柔らかく微笑む。

「家族……」

リュシアが小さく呟き、アサヒが隣で頷いた。

「ええ。誰かを支えるのに、血のつながりなんていらないのよ」

その言葉に、アマネの胸がじんわりと熱を帯びた。

その時――。

「きゅいっ!」

小さな白い影が、干物をくわえて囲炉裏の脇を駆け抜けた。

「カグヤ! また!」

アマネが慌てて立ち上がる。

白狐の小さな背中は、尻尾をふわりと揺らしながら縁側へ逃げる。

皆が笑い出し、火を囲む場は一層にぎやかさを増した。

仲間以上、家族未満。

けれど確かに心を寄せ合える空気が、庵を優しく包んでいた。


お読みいただきありがとうございます。いけるところまで連続投稿!(不定期ですが毎日目標)。

面白かったらブクマ&感想で応援いただけると嬉しいです。


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