2.紗那
総司がかくまってもらっている屋敷の一人娘、紗那は総司より年下なのに割と世話焼きで純情な女の子だ。
幼くして父親を亡くしたそうだから、母親似で穏やかな性格である。
ただ、怒ると鬼のように怖い。
総司を心配して怒っているのだが。
近藤さんや、土方さんが頑張っているのに自分だけのんびり寝ているのは悪いと総司は思っていた。
それに、体調がよくなったとき、剣の腕が衰えていたらいやだ。
早く元気になって、新選組に戻るのだから。
チラリと横を見ると、菊一文字が掛けてある。
紗那と約束したが、まぁ抜いてみるくらいなら…。
たまには手入れもしないと。
総司はそっと刀に手を掛けた。
その頃、紗那は。
庭に水を撒いていた。
こうしておくと夕方辺りが涼しくなる。
水が石と石の間を通って垣根のほうへと流れてゆく。
ふと、垣根の向こう側に足があるのに気づきた。
それも数人。
「あの…何かご用でしょうか?」
「沖田総司はどこだ」
編みがさを被った浪士が、刀をギラつかせて立っている。
「お、沖田総司…?そんな人はおりません」
内心紗那は焦っていた。
総司さんがここにいることは遺族の方と、新選組の人以外誰も知らないはずなのに。
「嘘はいけねぇや。俺らァ知ってんだから」
新選組をよく思っていない倒幕派の輩だろう。
ならばなおさらこの屋敷に入れるわけにはいかない。
「あいにく私は忙しゅうございます。お引き取りください」
「ほう、力づくで通ってみろと申すか」
「誰もそんなことは―――」
「邪魔する者は女子供だろうが容赦せん」
浪士は刀を振り上げた。
話の展開が早いですが、お気になさらず←
次もがんばりますっ