春名:釣り合ってないかもしれないけど、やだ
もっと優しくしたいとか、ワガママ言わないようにしなきゃって思うけど、なかなかできない。
付き合ってもう、半年が過ぎた。
それでも、じっと見られると、照れる。
落ち着いた春臣の声にドキドキするし、そんな風に落ち着けないでいるあたしが、やだ。
──だから、きつい事言っちゃったりする。
三津屋からも、春臣かっこいいし優しいし、いいねって言われる。
なかなか「うん」って言えないけど、あたしもそう思う。
春臣はかっこいいし、優しい。
……だから、葛城に言われた釣り合ってないっていう言葉が、気になっちゃう。
春臣とあたしは、身長差がかなりある。
でも、葛城は身長もそれなりにあるし、見た目だって大人っぽい。
課外活動のときだって、春臣と葛城は仕事を任されてた。
でも、あたしは「大丈夫?」「それ、重いでしょ」なんて気遣われた。
考えたくないけど、制服じゃなかったら、あたしは同じ高校生だとは思ってもらえなかったかもしれない。
「……やだ、やだ」
悔しいしそんなの認めたくないけど、あたしと春臣が釣り合ってないのは、きっと、……本当。
だから、どこかで鏡とかに映るの見たら。
一緒に撮った写真とかを、改めて見たら。
──春臣は、あたしとじゃ釣り合いが取れてないって気付くかもしれない。
葛城とかとの方が似合ってるって思うかもしれない。
そんなの、──絶対にやだ。
釣り合いが取れてないかもしれないけど、あたしは春臣がいい。
春臣には、葛城の方がいいのかもしれないけど、……やだ。
だってあたし、春臣好きだもん。
春臣だって、あたしのことを好きって言ってくれたもん。
「気付いてないからかもしれない、けど……」
もし葛城に声かけられて、誘われたら、実際に見たら、変わるかもしれない。
そうしたら──春臣は、あたしじゃなくて葛城を選ぶかもしれない。
もし、そんな事になったら、どうしよう。
絶対にやだ。
やだ、やだ、やだ。
でも、もしそうなったら。
「──そんなの、絶対、いやっ……」