春臣:……困りました。
「えっと、番号は確か──」
春名さんに教えていただき、メモしておいた番号に、電話をかけてみます。
聞いた事が無い店名ですが、新しい店を探すのはなかなか楽しいです。
春名さんのお姉さんに会ったのは今日が初めてでしたが、とてもフレンドリーで親しみやすい方でした。
何かあったらいつでも言ってねと言ってくれて──
……と、電話が繋がったようです。
「pinkydreamです。ご予約はご宿泊とご休憩のどちらになりますか?」
お忙しい所恐れ入ります、お尋ねしたい事があるのですが、と僕が口を開くよりも早く、電話口の女の人がそう言いました。
……ご宿泊とご休憩、ですか?
何の事だろうと一瞬言葉に詰まってしまいました。
「お客様、ご予約でしょうか?」
「あの、一つお尋ねしたいのですが宜しいでしょうか?」
「はい」
「こちらの番号は」
春名さんから聞いた番号を読み上げました。
すると電話口からは、はい、という返事が返って来ます。
どうやら店に間違いは無いようです。
「大変申し訳ないのですが、そちらはどういったお店なのでしょうか?」
「どういった、──とは……」
「失礼致しました。知人の方からそちらのお店のカードを頂きまして、お勧めだと言われたので、お電話させて頂きました」
「そうでしたか。ありがとうございます。こちらpinkydreamは──」
……大変困りました。
どうやらこの番号は、プラチナ会員様専用の部屋予約番号なのだそうです。
午後7時までに電話をすれば、部屋を予約する事が出来るサービスを受けられるもので、入り口でカードを提示するとさらに10パーセント割引になると教えてくれました。
それに加えてウェルカムドリンクを2品と、宿泊の場合には朝食までサービスになるそうです。
沢山の方からとても好評を受けているサービスだという事でした。
是非ご利用をお待ちしておりますと言われ、会話が終了したのです──が。
「困りました」
場所は大体わかりました。
内容も大体わかりました。
問題は、──pinkydreamが、いわゆる……だったという事です。
「春名さんに、何と説明すればいいでしょうか」
調べてみますと言った以上、きちんと報告をしなくてはいけません。
春名さんはそこがどんな場所か知らず、僕に尋ねてくれたのですから。
ただ、僕は「春名さんが好きそうなら、ケガが良くなり次第行ってみましょう」と誘ってしまいました。
これでは、結論を春名さんにゆだねてしまうことになりかねません。
もちろん春名さんの意志は大切ですが、こういったこと、……いえ、この場合は──
***
……気がつけばもう、15分も経っていました。
そろそろ春名さんの家でも晩御飯だと思われます。
僕から、調べてかけ直すと言ったわけですから、春名さんは着信を待ってくれているはず。
既に待たせているのに、これ以上待たせるわけにはいきません。
意を決して、春名さんに電話をかけました。




