デジャブ
「 あっちゃん、あっちゃん、贈り物が届いてたよ 」
姉の百合に美しくラッピングされた大きな箱を渡される
「 これ どうしたの? 」
「 玄関に置いてあった… 」
「 え~、それってヤバくない? 」
えっと送り主は…書いてない…
「 おっ、赤い薔薇のカードが付いてる! えっとね…色の白いあなたにこの色は映えるでしょう 金曜日を楽しみにしています Z 」
Z…金曜日って……あ! 樹莉さん…?
「 ちょっと~Zって誰、誰? あんた いつの間に~♪ 」
「 おねえちゃん、そんなんじゃないって 」
「 ちょっと開けてみてよ 」
姉にせっつかれてラッピングを解き箱を開けると…
「 …綺麗… 」
エレガントなボルドーカラーの花柄のワンピースが入っていた
「 素敵じゃない…あっちゃんに似合いそう! ちょっと着てみてよ 」
「 うん 」
袖を通すと 心地いい肌触りにびっくりした
サイズがピッタリ…まるであつらえたみたいに…
くるくる回ると裾のシルエットが美しい
「 すごい綺麗… めちゃめちゃ似合うじゃない… 」
鏡に映る私は別人のように透明な青白い肌にドキリとした ボルドカラーがよく映える
「 よっしゃ、当日はおねーちゃんがヘアメイクしてあげるからね あっちゃんをとびきり素敵なお姫様にしてあげよう 」
スタイリストの姉は瞳をキラキラ輝かせてはりきっている
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少し早すぎたかな…
昨夜は緊張して眠れなかった
約束の時間まで30分も前に来ちゃった…
劇場の前に立っていると背後からふわりと両手で目隠しされる
な、なに! このドラマティックなシチュエーション!
「 誰だ? な~んて…昭和のドラマみたいなことしてるな 」
ああ…耳心地のいいその声 優しい笑い方…
「 じゅ、樹莉さんっ 」
「 当たり… 」
真紅のミニ薔薇のブーケをくれる
なんて素敵なサプライズ…
「 髪…巻いたんだね…よく似合ってる… 」
え、巻き髪に気付いてくれた 一度しか会っていないのに…
髪に指を滑らせ背の高い彼は私の前に顔をニュイっと近づけると
「 綺麗だよ 」
ふっと微笑まれ目眩が…
う、嬉しい…このシチュエーションでこのタイミングでこんな風に褒めてもらえると…
あ、でも…こんな風に昔から褒めてくれていたっけ
ん? まただ…遠い記憶がふと、蘇るようなこの不思議な感覚は何なんだろう…
「 reincarnation 」
え?
「 なんでもないよ…入ろうか…お姫さま… 」
彼の腕に手を添え私は劇場へと入って行く
「 プログラム一部ください 」
「 はい… 」
「 嬉しい~ありがとう 」
席に座り一緒にプログラムを見ながら幕開けに胸を躍らせる
数時間後…
予想以上の素晴らしい舞台に感動して私はなかなか現実世界に戻れずに席に座ったまま動けずにいた
「 あーちゃん…戻っておいで… 」
彼に頭をクシャリと撫でられハッと我に返った
「 気に入ってもらえたようだね 」
「もうもう! 席は素晴らしいし舞台が…音楽も…素敵で切なくて…特にラストシーンで
彼女が前世の記憶を取り戻して蒼い口づけをするところが感動的で…私、誘ってもらえ
て本当によかった 樹莉さん、ありがとう」
「 愛するひとが目覚めてくれないのは辛いね… 」
一瞬 彼は悲しそうに瞳を伏せて呟くと笑顔になり
「 もう帰るつもりかい? お腹は…空いてないのかな? 」
お腹をナデナデされた途端…ぐうぅぅぅぅ~きゅるるる
「 素直だね 」
あ、あはは…恥ずかし~
「 おいで…友達がハンバーグとステーキの専門店やっていてね… 」
ハンバーグにステーキ…ですと??
肉食女子の私は思わずキラキラしてテンションがぱああぁぁぁ♪
「 いくいくいく! ハンバーグ大好き~♪ 連れて行ってくださいっ 」
「 では…車にお乗りください お嬢様… 」
彼の愛車にエスコートされ私はお腹を鳴らしながらハンバーグとステーキのお店へと向かった
to be continued
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