自分の立ち位置
世の中はそんなに甘くなかった。
やっぱり自信はなく声も出ていない、、
逃げ出したい思いだけがこみ上げた。
そして改めて決意するのであった。
ちょうど三年前、中学生の頃、
その時の友達がギターを始めると言った。
それを聞いて仲良しグループみんなでギターを始めることにした。
世代のせいか親がみんなギターを持っており5人みんなでギターを握った。
一週間、二週間、一ヵ月と過ぎるころには
なんとか曲っぽくを弾けるようになっていた、、、
のは俺だけでみんな辞めていた。
それからギターは俺の趣味になった。
学校から帰るととりあえず触り、受験勉強の合間にもいい気分転換になった。
当時よく聞いていたフォークデュオの曲を手当たり次第に弾いていた。
ただただコードだけを弾いていた。
あれから三年。ギターだけはたまに弾き続けていたので弾くことはできる、
その先を考えたこともないし、歌が苦手な俺には縁のない世界だと思っていた。
もしエレキギターを手にしていたらバンドを組んだり違う世界があったのかもしれない。
でも俺がもっていたのはアコースティックギターで一人でも成り立ってしまう。
一人でただ弾くだけで不自由しなくて考えることがなかったんだ。
この日、拓哉に出会ったことで俺の音楽がゆっくりと動き始めた。
「よし、俺もストリートをはじめよう!」と。
早速その週の金曜日、ギターを持って駅前地下道にきた。
早足で行き交う人々、友達話しながら歩く高校生、電話しながら歩くスーツの大人。
今まではただ日常の背景だったものが意識するとこんなにも違うんだなと思えた。
地面に座り、あぐらをかきギターをケースから出す。
いつものようにチューニングをする。
地下に響くギターの単音。
通りすぎる人がチラチラみていった。
さあ準備は整った、いつものようにコードを鳴らす。
前奏が終わり歌が始まる。
ふと前を歩くOLと目が合った、、、
俺の口から最初の歌詞すらも出てこなった。
一人で歌うと言うことが、
ストリートで歌うということがこんなに怖いことなんだと
そこで初めて知った。
その日俺はただただ地下道でギターを弾き歌うことなく終えた。