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再会

少し蒸し暑い夏の日。いつもと変わらない帰り道。


少し手間取りながら料金を払い、バスから降りた。時々吹く風に心地よさを感じながらいつものように地下道に降りていく。


駅を越えるようにどんどん進んでいくと何かが聞こえてきた。


『この長い〜長〜い♫』


そう、歌だ。路上アーティストという言葉が徐々に浸透し始めていたあの頃、俺は初めて実際に活動している人に出会った。


響く声、掻き鳴らすギター、全てが新鮮で全てが眩しかった。

でも1番驚いたのはそこにいた人物が見知った顔だったからだ。


そう、拓哉だった。


拓哉とは小学校が一緒で中学からはバラバラの学校になっていた。高三のこの時期に再会するなんて実に5年ぶりだった。


演奏が終わる。

見てる人、通りすがる人からパラパラと拍手があがる。


俺はすかさず声をかけた。

「よ、ひさしぶり!」


「お!ひさしぶり、薫だよな!全然変わんねー(笑)」

そう言って拓哉は笑ってみせた。


昔と変わらないその様子にホッとすると一気に言葉が出てきた。

「何、ここでよく歌ってるの?

ギター始めてどのくらいだよ?

高校とかどうしてるの?

てか音域広くね?なぜその普段の声でそうなる!?」


気づくと失礼なことも含めて口から疑問がすべて出ていた。

それでも拓哉は嫌な顔せず全部答えてくれた。


ここでよく歌っていること、

高校に入ってからギターを始めたこと、

親に迷惑をかけたくなくて通信高校に行ってること、

何故か歌ったら高い声が出たこと。


気にする風でもなく笑いながら話してくれた。

昔からこーゆー奴だったな。そう、だから内気な自分でも仲良くなれたのだ。


でも一つだけ納得できないことがあった。

それは歌声だ。


「いやいやいや、他はわかる、まぁ分かる。

でも声はおかしくね?そのキー出る人なかなかいないぞ?

普段の声そんなしゃがれてるのにどうしてそうなった!」


そう、疑問しかなかった。

普段が声変わりの途中のようなしゃがれたカスカス声なのである。

それが嫌で音楽の授業歌わずよく残されていた。


本人曰く、

「曲好きになったから歌ったら歌えた」

とのこと。うん、納得できない。


同じく音楽を苦手としてよく二人残されていた俺には納得できないことだった。


「それなら薫もここで歌ってみたら?

きっとすげー歌えるって!」


「!」

その一言にハッとなった。


歌は苦手な自覚はあったし上手くないのもわかっていた。

でも、もしかしたら人前で歌うことで何かが変わるのかもしれない。

そう思った。



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