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真昼の星を結ぶ  作者: ばやし せいず
第3章 星の世界
49/50

49 おめでとうございます

 その日は藤ヶ峰女学園で昼過ぎから祝福祭が執り行われることになっていて、新米とも中堅ともつかない俺は、案内係を任されていた。


「千葉先生、久しぶりー!」


 寒さに震えながら警備員と一緒に正門に立っていると、目の前にタクシーがとまりピンク色の振り袖姿の船渡川が出てきた。化粧はかなり濃くなっていたが、髪は黒く染まっている。

 彼女が通う大学では実習も多く、身だしなみに気を遣うらしい。


「サプラーイズ!」


 船渡川がタクシーの中に向かって手招きする。彼女の親かと思ったが、出てきたのは船渡川と同じように晴れ着に袖を通した野田海頼だった。

 目が合うと、恥ずかしそうに笑った。


 本来、今日の祝福祭に招待されるのは二十歳になる、高等部の卒業生のみだ。野田は在学期間も長かったため、学園側の計らいで特別に招かれたという。

 花火大会の日、浴衣すら着られなかった彼女は美しい振り袖をまとっていた。


 野田海頼と連絡を取ったのはあれから一度だけ。

 彼女が無事に高校を卒業し、大学に進学するという報告をもらった時だけだった。顔を合わせたのは公園で号泣していたあの日以来だ。


「ちょっとー、何か言いなよ」


 船渡川に小突かれた。


「えーと、……二十歳、おめでとうございます」

「何だそりゃ!」

「きれいだなとか、大人っぽくなったなとか教職員が言ったら、問題だろ」

「千葉先生、赤くなってる」


 船渡川が笑い、野田も顔を赤らめる。


 行き場に困った卒業生たちに声をかけられ、ようやく自分が案内係であることを思い出した。


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