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・・・目が覚めると、8時。
・・・今日は大学だがもう今日は眠いので欠席することにする。
「茂、早く起きたほうがいいんじゃない?」
・・・一階で三千重の声がする。
「・・・仕事で眠いのは分かるけど、洗濯まとめてするから早く起きてよ」
「・・・分かった・・・ぜ・・・・・・」
「早く起きろォッ!!」
「―――――!?!」
・・・これが目覚ましの代わりだ。絶対に目が覚める。
「ったく、せっかくの朝食が冷めちゃうじゃないの」
「分かったから今日は大学は・・・」
「はいはい今日も欠席ね、分かりました。ってゆーかさぁ、定時制にしたら?」
「面倒だ」
三千重はため息をつく。
「ずぼらな奴ねぇ、学費がもったいないっての」
「ずぼらで悪かったな。じゃあなんで俺に結婚してくれなんて言ったんだ?」
「・・・そりゃあ・・・・・・好き・・・だから・・・」
頭を撫でてやった。
「正直な奴だな、こんな嫁を貰って勿体無いぜ」
「な、何よ、馬鹿にしてんの? それとも褒めてんの?」
「どっちでもいいさ。まぁ、お前のことが好きだってことは確かだな」
一気に三千重の顔が紅潮した。
「ヤダヤダヤダーーーーー!!!!!」
「うお、おいおい、枕を投げつけんじゃ、むぎゅッ!? ぐはぁッ??!」
・・・こんな事が繰り返される、新婚2ヶ月目。
「んで、俺のどんな所が好きなんだよ?」
「そりゃぁ、・・・うん、全部・・・かな?」
「特に、なら?」
「まずは、・・・顔でしょ。次に性格で、スタイル、口調、癖、あとは・・・」
「おいおい、キリがねぇぞ?」
「まぁ、異質なところかな?」
・・・心に小さな棘がチクリ、と刺さった。
・・・異質。・・・まるで自分自身を否定されたようだ。
「・・・あッ、・・・ごめん・・・・・・あたし・・・」
「いい。・・・本当のことだからな・・・」
・・・そう、俺は・・・異質だ。昔から、異質だった。・・・物心がつく前からあったさ。
・・・・・・俺が、・・・『竜』だってことが、・・・異質な訳がないだろう?
・・・その後は、暇だったから、篤志に電話をかけた。
『茂か~? 俺は今とても暇だからさようなら』
「おいおい、それなら別に電話をかけたっていいだろ?」
『分かってるっての・・・』
・・・どうやらアンニュイというよりは・・・
・・・退屈で退屈で何をするのにも意欲が湧かない・・・つまり鬱。
『・・・何かあったのか? 少し声が落ち着いてるようだが』
「いつもはせかせかしてるって言いたいのか?」
『いや、そうじゃなくって・・・。落ち込んでるように思えるって言っただけだ』
「・・・三千重がな、・・・俺のことを・・・異質って言っただけだ・・・」
篤志がため息をついた。
『何だよ、そんなことか・・・』
「そんなことってよぉッ・・・!」
『一体何回落ち込んだら気が済むんだ?』
・・・そう、これが初めてじゃない。初めて言われたときは、・・・少し涙を流した―――――無論三千重のいない場所で。
そして、電話をかけ、愚痴をこぼすと、励ましてくれた。・・・だが、毎回毎回電話をかけてばかりだと、・・・やっぱり向こうは向こうで愚痴ばっかり聞かされるのは嫌だったようだ。
「これまでずっと愚痴を聞いてきたから、その分のツケだ」
『ちぇッ、・・・やっぱその方向から攻めるか・・・』
「・・・今日はもう吹っ切れた。さんきゅー」
『俺は何も言ってねぇけどな』
少し苦笑した。
「んじゃまた今度」
『あ、ちょっと待った』
切りそうになった。危ない危ない・・・。
『・・・いや、やっぱりいいや』
「・・・無理すんなよ」
『へ?』
「・・・お前は俺と『同じ』だからこの痛みが分かるんだ。だから、俺もお前の痛みを理解してやりてぇんだ」
『・・・はは、分かってるさ。じゃあ、また今度、な』
プツッ、ツー、ツー、ツー・・・。
To be continued...