#:16
・・・彼は、三千重さんの兄、つまり俺のお義兄さんだった。正直直接会うのは初めてなんだけどな。結婚式にも出てなかったし。お見合いの日に俺はちょっと旅行(家出)してたしよ。意外とかっこいいが、何歳だ?
「・・・そいつがお前の弟か?」
「ああ。情けない顔だろ?」
「・・・お前と同じ位な」
俺は苦笑いするしかなかった。・・・と、蟲が再び蠢く。
「ちッ・・・まだ動くか・・・」
「三千重、・・・方舟のところへいってやれ」
「え? あぅ、・・・うん」
『させるかよぉおおおォオオオッ??!!』
もう一度合図を送る。蟲は勢いよく飛んできた。
「少しは落ち着いたらどうだ? インヴィディア」
そう言うと彼は蟲を素手で掴み、地面に叩きつけた。体液のようなものが少し飛び散り、甲高い悲鳴のような断末魔を残して動かなくなった。
「・・・すげぇ・・・」
『くッ・・・』
笛をもう一度奴は吹こうとした。が、
「はい、・・・これでおしまいな」
茂はその笛をひょいと取り上げると、踏み潰した。
『あーッ!! それ作るのに苦労したんだぜ!!』
「黙っとけ」
そして拳骨を一発。
『いだぁッ・・・』
頭をおさえて痛みをこらえようとしているが、・・・おっと、一応言っておこう。茂は基本的に叩くときはグーだ。そんでもって軽くコツンと叩くだけでもだいぶ痛い。・・・無論、本気で叩かれたら頭をおさえて地面を転がって悶え苦しむほど痛い。
「・・・な、何とかなりましたか・・・?」
「って、まだ帰ってなかったのかよッ?!」
リポーターとカメラマン。無論、カメラは動いているようだ。・・・スクープ確定だな。
・・・おっと、奴がまた起き上がった。うわぁ、しぶとすぎだろ、おいおい・・・。
『憎い・・・テメェらが・・・憎いッ・・・テメェらを・・・消す』
「・・・な、何をいい言ってるんだ、あ、あああのガキは・・・ッ?!」
いや、あせりすぎだろ。
「いや、ただのガキじゃないみたいだぜ」
「いや、それは見りゃ分かるだろ・・・」
ほら、早く帰りなよ。・・・そんな感じで俺は彼らに目線を送る・・・。って、こっち見ろよッ! そして、黒いオーラが彼を包む。
「だから言ったろ、命が大事かどうかって?」
「あ、あわわ・・・」
・・・オーラが剥がれていく。そして、その下にあったのは、
「わ、わわッ、わぁああああぁああッ?!」
・・・その色は、闇のように黒く、目は血のように真っ赤に染まっている・・・竜だった。
「・・・小さいな。軽自動車ぐらいじゃないか?」
『うるせぇッ、馬鹿にするな!!』
・・・いや、・・・俺たちのほうがもう少し大きいだろうな。・・・普通乗用車ぐらい?
「おいッ・・・か、帰るぞッ?!」
「あぁ、たくさん撮れたしなッ、じゃ、さいならッ!!」
やっと奴らが帰ってくれた。
「・・・ちぇッ・・・おい、ガキンチョ」
『だから俺は・・・』
「バッチリ撮られたと思うか? まぁ、あいつらのことだからきっとほとんど映ってないと思うがよ」
『・・・それならば、計画に支障はないだろう。そして、これから俺は貴様の息子を誘拐する』
茂は、少し吹き出してしまった。
「貴様ねぇ・・・。言えるのか? そんなことが? この、俺に?」
正直、回りくどい。
「おい、茂・・・」
「なんなら、黒白つけてやろうじゃねぇか?」
『・・・貴様を除いて2対1か・・・。不利だな・・・』
竜の数を言っているんだろう。
恐らく奴が知っているのは、俺とお義兄さん。・・・だから、きっと茂はこう言うだろう。
2対1? 何勘違いしてるんだ?
「・・・3対、1だ」
奴は少し驚いたが、すぐに平常心に戻る。
『・・・ということは、だ・・・。俺は・・・』
「あぁ。お前は」
「・・・負けるだろうな」
そして、お義兄さんはふっと笑うと言った。
「生憎だな、インヴィディア・・・」
『・・・くそ、くそくそくそくそッ!! 殺してやるゥ、絶対に、殺してやるゥッ!!』
そして、奴は吼えた。だから、俺たちはまずどうしたか分かるか? ・・・無論、・・・逃げた。
「おいおいおいおいッ、結局逃げるのかよッ?!」
「こんなところでへーんしんッ! 的なノリができるかッ!」
まぁ、街中では人目につくからよ、どこか誰もいないようなひっそりとした場所で・・・。
「・・・おい、・・・三千重はどうした?」
「・・・・・・あ。・・・そういえば・・・」
そして、逃げていた速度で家に戻る。どうやら、奴はマイホームの入り口を破ろうとしているらしい。
「お、俺の家が・・・」
「家なんざいくらでも建つ。それとも、三千重には代わりがいるとでも?」
おいおい、そんな勘違いされちゃかなわないぜ・・・。
「とりあえず、どうするんだ?」
こいつをどかさない限りは、家に入れない。家に入らなければ、三千重たちが危ない。だが、どかすためにはやはり、竜にならなければならない。でも、こんな街中で人目につく場所では・・・。
「きゃぁ、何あの変な生き物ッ?!」
「えぇ、トカゲかしら? 気持ち悪い~・・・」
「茂さんってあんなの飼ってたのかしらぁ・・・」
「やだ、なにこの虫みたいなの~?」
ぎゃぁ、俺のイメージが音を立てて崩れていくぅッ・・・!!
「違うからッ! 俺のじゃないよ?」
「きゃぁ、茂さんが話しかけてくれた~ッ!」
「えぇ、茂さんの言葉なら信じますわ~・・・」
「どこのどいつが飼ってるのかしらぁ・・・」
「じゃあこの虫みたいなのも~?」
ファン・・・いや、近所の主婦さんたちらしい。だが一応、準・俺のファンのようだな。
「・・・警察、・・・呼んだらどうだ?」
「・・・は?」
ついそう切り返してしまう。
「俺たちの手には負えない。・・・こんなところで一暴れするわけにはいかないといったのは誰だ?」
・・・信じてくれるかは、分からないが。俺はケータイをとりだし、『1,1,0』とプッシュした。
そして、緑色の電話マークを押す。・・・つーかこの番号に電話するのは初めてだ。
ちょっとドキドキするな・・・。・・・あれ?
「・・・うんともすんとも言わないな・・・?」
と、蒼真がケータイを奪う。
「・・・電源入ってないぜ」
「は? ・・・ありゃ、ほんとだ」
ディスプレイは真っ黒。電源はつけたままだったんだが・・・。
「えっと、あれ、入らないな・・・」
何度電源ボタンを長押ししてもつかない。・・・ちゃんと充電したんだけどな・・・。
「・・・くそ、・・・インヴィディアの野郎・・・、充填が始まっちまってるな・・・」
「チャージ・・・?」
と、衝撃音が響き、電信柱の電燈が一つ、二つと消えてゆく。
日が傾きかけていたせいで、その場は薄暗くなってしまった。
「やだ、帰りましょうよ・・・」
「あぁ。・・・俺の写真集、買ってくれよ?」
「生で見れたら十分です」
ちぇッ、ケチ。
・・・奴も、全く動く気配が・・・って、・・・おいおい、なんかミシミシいってるよ? ちょッ、やめてよ。これ以上やったらマジで・・・。そして恐れていたこと。
「ああぁああッ?!!」
玄関扉、大破。おいおい、住居不法侵入でバッチリ訴えられるよッ?! だが、なんとか通れるようになった。
「ちくしょう、あとでしっかり弁償してもらうからなッ! 首洗って待っとけッ!!」
俺たちは、自宅へと入っていった。・・・あ。・・・靴脱ぐの忘れた・・・。
To be continued...
初めてあとがき書かせていただきます、作者のknight circleです。
正直こういうこと書くの慣れてないんですけどね(苦)
書かなかったから愛想悪そうな感じで思われてそうな気がしたんで書きます。
さてさて、ようやく茂も竜化しそうです。まぁ、楽しみなのは恐らく自分一人。
この小説自体ほぼ誰得? 俺得! って感じなんで(笑)
そりゃこれから茂は自宅で大暴れするんですよ? 想像してみたら・・・結構シュールですね。
そろそろ登場人物の整理をしないと自分の頭がこんがらがってます。
ちなみにインヴィディアって横文字だから覚えやすいかと思いきや、
他の横文字の名前のせいでやっぱり分かりにくかったりします。
ちなみに名前の由来は七つの大罪のラテン語読み。ほぼ適当です。間違ってても勘弁。
他の人たちの名前の由来は・・・あるのかな? 自分でも覚えてなかったりします。
駄目だなぁ・・・。ま、まだまだ登場人物は出てきますからね。
そろそろ登場人物紹介でも書こうかな? と思ってます。
では、次の話をお楽しみに。まぁ、このあとがきもやっぱり俺得だったり(笑)