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AZURE  作者: Knight Circle
16/21

#:14

俺は、耳を疑った。

「・・・馬鹿野郎、そんな簡単に殺されるなんざ言ってんじゃねぇよ・・・」

『・・・後ろに、・・・誰かがいる。そいつが・・・俺のわき腹に・・・何かを・・・』

「それだけかよ? 何を突きつけられているかぐれぇ分かるだろ・・・?」

『だけどよ・・・あッ』

音が濁る。電話を別の人に渡したか?

『貴方の弟は私が預かりました。それぐらい分かりますよね?』

「・・・てめぇは・・・誰だ?」

相手は変声機をつけているから全く分からない。

『私は・・・強欲・・・とでも言っておきましょうか』

「は? 答えになってねぇぜ??」

『わざわざ本名をいうと思っていますか? 甘い人ですね』

「・・・ならいい。要求は?」

これが一番重要だ。用意できるものなら即刻用意する。金とかならすぐにでも。

『――――――を、引き渡してください』

「・・・は? ・・・今、なんつった?」

一瞬、何のことか分からなかった。だが、思考回路を一周したあと、その名前の意味が理解できた。

『聞こえませんでしたか? もう一度言います。アーク・セプトゥアギンタを引き渡してください』

「断る」

『・・・即答、ですか。・・・相当渡したくないようですね?』

俺は当たり前だ、と言った。

「アーク・せくつあなんとかだか知らねぇけど、今のあいつは、方舟、・・・芳養房 方舟だ」

『つまり、彼は貴方の息子だから、・・・ですか?』

「分かってるじゃねぇか。なら話は終わりだ」

『いいんですか? こっちには貴方の弟が・・・なッ?! お、おいッ、インヴィディア?!』

どうやらあっちは取引どころじゃなくなっているようだな。俺は切ボタンをポチッ。電源を切った。


「きゅうぅうう・・・」

「お、おいッ?! しっかり見ていろって言っただろうがッ!!」

駄目だ、気を失っている。しっかり縄で縛っていたはずが、見事に切断されていた。

「ど、どこへ消えた・・・・・・ッ?!」

・・・開かれている窓のもとへ走る。

見れば、青い竜がいた。

「・・・まさか・・・」

『まさか、どうしたって? お生憎様だぜ』

そう言うと、奴は翼を広げて飛んでいった。その速度は速く、目を凝らしても見えなくなっていた。

「・・・ぐふふふっ、ふふふふふ・・・」

どうやら奴は私を本気にさせたようだ。

私はアヴァリティア。『強欲』の名を与えられしモノ。マスターに・・・幸あれ。


俺は蒼真の安否を確認する。

「・・・大丈夫か?」

[ああ、大丈夫だぜ。心配すんなって]

まぁ、俺の弟だしな。口には出さなかったが、彼には十分届いている。

「お前、あのセリフ言わされてたんだろ?」

[あぁ。じゃなきゃ逃げたりしねぇっての]

「どこからが、言わされてた?」

[電話をかけてきたときからだ]

やっぱりな・・・。

「最初の言葉で言わされてるなって分かったぜ」

[演技うまかったな、声優になれよ]

皮肉だな、こりゃ。俺がモデルになったことをあまり良く思っていないようだ。

「もうすぐモデルをやってる雑誌を卒業する。それから考えてもいいな」

そう言うと、俺は本題に戻す。

「で、そっちの様子は?」

[・・・特に変化はないぜ。だけどよ、もう一人が・・・・・・]

急に蒼真が黙った。

「・・・どうした? やっぱ、尾行(つけ)られてるのか?」

[・・・あぁ、そうっぽい]

頭が痛み、こめかみを押さえる。まぁ、尾行されないはずがないしな。

「とりあえず逃げ切ってくれ」

[あぁ。・・・とりあえず連絡はこれで終わりにしようぜ。疲れるしよ]

「あぁ。そうだな」

俺はそう言うと、黙話を終了した。

・・・おっと、説明が遅くなったな。黙話についてだ。俺たちは双子だ。それは分かっているよな。双子って言うのは不思議だぜ。結構意思疎通ができるんだ。俺たちはそんでもって竜だ。それが理由かどうかは分からないけどよ、なぜか小さい頃からずっと俺たちはどこにいても会話ができたんだ。ま、口に出してるわけじゃないけどよ。だから黙話だ。命名したのは蒼真だ。俺は『心話』が良かったけどな。

とりあえず俺はずっと外にいたことに気付き、家に帰ることにした。


帰宅途中、三千重が追いかけてきた。

「い、いきなりどうしたのよッ?」

「瞬発力を鍛える・・・」

「嘘おっしゃいッ!」

「・・・すまねぇ」

さすがにこれ以上はアレなので、俺は何があったか話した。

「・・・そんなに私のこと、信用できないの?」

「お、俺は・・・」

「私はあなたの妻。だよね」

「ああ。そうだぜ、おまえは芳養房三千重、俺の妻だ」

「だったら、なおさらだよ・・・」

三千重は俯いてそう言った。

「・・・何も言わずに飛び出したことは謝る。だから―――」

「ッ!!」

・・・貫く電撃が顔を襲った。それは電撃でもなんでもなく、三千重が叩いただけだった。

だが、その痛みは少し冷酷なものだった。

「・・・私が足りなかった? ・・・いや、・・・違うよ」

「・・・・・・俺、お前のこと、信じてるぜ。だけど、・・・傷つけたくないし、失いたくもない」

俺は、少し一息ついて続けた。

「お前、・・・三千重のこと、守りたいんだ。だから、教えられなかった」

それでも三千重はまだ俯いている。

「・・・俺は引き裂かれてもいい。でも、三千重が傷ついたら、・・・駄目なんだ」

ふとこっちを見る。

「三千重が傷ついたら、・・・俺はその十倍痛いからよ、いや、・・・百倍、もしかしたら千倍も」

「・・・茂・・・」

「だからよ。・・・俺、ずっとお前の笑顔を見ていたい。・・・笑っててほしい」

「・・・そう・・・分かったわ。なら、私は関らない方がいいのね。なんか妻に隠し事って怪しい感じねぇ」

「そ、そんな意味で隠してるんじゃねぇよッ!!」

「さ、とりあえず帰ろうよ。方舟が待ってるわよ」

・・・え?

「・・・方舟は・・・一緒じゃ、なかったのか?」

「え? 家で待ってるようにって・・・」

血の気が引いていく。

「・・・おい、聞いてるか?」

[ん? ・・・あぁ、聞いてるぜ]

「そっちの様子は? まだ、尾行されているのか?」

[いや、なんとか振り切ったぜ]

その不安は、確信へ変わった。奴はルートを変更して、俺の家に押しかけるつもりだ。そして、たぶん、いや、きっと。恐らく、いや、絶対に―――。

「・・・家へ全速力で来い。・・・奴らは実力行使にでるぜ。・・・方舟が危ない」

[なッ?! ・・・分かった、すぐに行く。そういうお前こそ俺より先にいなかったら許さねぇぞ]

そういい、蒼真は黙話を中断した。

「まさか、・・・方舟が危ないの?!」

「そうみたいだ」

「な、なら急がないとッ!!」

三千重は家に向かって走り出す。

「お、おいッ、早まるなッ!!」

三千重は、角を曲がるときに人にぶつかって尻餅をつく。

「あいたた、ご、ごめんなさい・・・」

「いえいえ、問題ないですよ?」

「だから落ち着けよッ、三千重ッ!!」

俺はなんとか追いついた。

「おっと、こりゃ茂さんじゃないですか」

「え? ・・・あ」

一瞬誰か分からなかった。だが、その特徴的な癖のある声は、物忘れの激しい俺の脳を刺激し、対象が誰であるかを瞬時に思い出させた。

「あ、あなたは・・・ッ・・・」



To be continued...

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