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AZURE  作者: Knight Circle
13/21

#:11

一度深呼吸。・・・眠れない。・・・目を瞑る。・・・だが、やはり眠れない。・・・隣では、三千重が熟睡している。

「・・・羊が52匹・・・」

・・・羊を数えても・・・やはり眠れない。・・・なぜ眠れないのか、自分でも分かっていた。ここ最近、いろいろなことが一斉にあったため、頭の整理ができていないからだろう。それに・・・、・・・誰にも相談していないからだ。一人で抱え込むなと言われ続けている訳が今になって分かった。


正直言うと、相談できる機会がない。・・・相談する相手が少ないからだ。

まず、親父は言うに及ばず。どんな話をしてもあっち系の話になってしまう。お袋はいつも、『男でしょ? ドーンと行きゃいいのよぉ、ドーンと!!』という展開になる。姉御は・・・、ほんと、お袋によく似たなぁ・・・。で、やっぱりお袋と同じような展開に。

あいつ・・・あぁ、俺の双子の弟なんだけどよ、蒼真(そうま)っつぅんだ。変わってるだろ? 親父がつけたんだぜ。ネーミングセンスが最悪だな。お袋につけてもらってよかったぜ。・・・だけどよ、あいつは気に入ってるんだぜ。少し意外だったな。

で、あいつに相談したら、・・・そのまま返される。あいつも同じような悩みがあるとさ。

双子には二種類あることは知ってるよな? 一卵性双生児と二卵性双生児。俺たちは一卵性双生児だからよ、似たような考えをよく持ってたんだ。それに、顔立ちやら体形やらがほとんど同じだからよ、よく間違えられたんだぜ。・・・だけどよ、性格だけは似なかったんだぜ、『性格だけ』はよ。俺は大雑把で、あいつは慎重。・・・あいつも十分大雑把だってのによぉ・・・。・・・と、この話はこれぐらいにしておこう。話題を戻さねば。

篤史はちょっとした事なら相談できるが、あまり多いと混乱してしまう。銀は・・・論外。あいつはお子様だから意味不明って感じになっちまう。・・・といっても小6だから少しは分かるだろうな。もうあいつも10代だし。

結局、俺の従兄弟の中での良識人は、光あにぃしかいない。一つ年上だ。

「・・・喉が渇いちまったな・・・」

・・・俺はベッドを抜け出した。

・・・ドアを開け、・・・方舟が使っている部屋の前を通り抜け、・・・台所の冷蔵庫を開ける。・・・玄米茶。冷蔵庫で二日前から冷やされっぱなしで、香りも味もすっかり失われている。・・・別に、香りと味を楽しむために玄米茶を飲もうとしたわけではない。玄米茶しか飲み物がないことを知っていたし、俺は喉が渇いたから茶を飲みに来ただけだ。

・・・喉を冷たい茶が通る感覚。・・・頭が少しクールダウンした。

「・・・これで眠れるだろうな・・・」

そして、俺は再びベッドに戻った。


もう一度深呼吸。・・・眠れない。・・・もう一度目を瞑る。・・・やっぱり、眠れない。・・・隣では、三千重が寝返りをうっている。

「・・・羊が134匹・・・」

・・・羊を数えても・・・やはり眠れない。・・・さっきと同じ展開。この調子ではたぶん、元凶を絶たねば眠れないだろう。時計をみるのもいやだ。明日は朝早くから仕事が・・・な。

「・・・光あにぃ・・・起きててほしいぜ・・・」

・・・リビングのソファーに寝転がる。

そして、電話帳でハ行の上から五番目、・・・『光あにぃ』を選択し、通話ボタンを押す。

・・・ワンコール。

「・・・出ねぇな・・・」

・・・ツーコール。

「・・・寝てるよな・・・」

諦めかけて切ボタンを押そうとすると、スリーコールの途中でつながった。

『こんな夜遅くにどうした?』

「・・・すまねぇ。やっぱ、こんな夜遅くに迷惑だよな」

『・・・まだ1時過ぎじゃないか、迷惑じゃない。今タクシーで仕事から帰ってる最中さ』

「・・・相談、してもいいか?」

『・・・あぁ。構わない』

俺は、胸中を打ち明けた。


『・・・ほんとかい? あながち、信じられないね』

「俺たちの存在も誰も信じられねぇと思うが」

『まあ、そうだよね。だけどそんな大事件に発展するとはねぇ・・・首相官邸を襲ったのが・・・』

「おっと、あんまり口に出して言うなよ、運転手に聞かれてるんじゃ・・・。・・・いや」

『・・・ん? どうしたんだい?』

「・・・ほんとはタクシーなんか、乗ってねぇんだろ?」

『・・・はは、ばれちゃったか。あぁ、うちにいるよ』

「・・・すまねぇ」

『謝らなくていいよ、ちょうど、話し相手がほしかったからさ』

「・・・」

・・・親友のために、恋人と別れたり、・・・返すあてのない金を貸してやったり、・・・同僚のために仕事を辞めたり・・・・・・この、・・・お人好し野郎が。


『そういえば、三千重ちゃんが昨日、電話をかけてきたよ』

「三千重が?」

『・・・大学、定時制がいいかどうかって言ってたよ。・・・大学に定時制なんてないのにさ』

「あの馬鹿・・・」

『・・・君も、それについて悩んでるってさ』

「は? 悩んでねぇよ」

『ほんとかい? 本当は・・・そんな勘違いで悩んでるんじゃ―――』

「辞めたよ」

・・・しばらく光あにぃが黙る。

『それは、・・・三千重ちゃんに言ったのかい?』

「今日、辞めた。仕事が忙しくなってきて、両立ができなくなってきたんだ。三千重にも明日言う」

『・・・分かった。・・・用件はそれだけかい?』

「・・・明けまで付き合ってくれてありがとな」

・・・少し、空の端が明るくなってきている。

「・・・じゃあ。・・・もうすぐ仕事だから」

『うん。・・・体に気を付けるんだよ』

「光あにぃもな」そう言い、切ボタンを押した。

仕事の用意をしようとしたが、頭がくらっとした。・・・そして、俺は短い眠りに落ちた。



・・きろおきろ、起きろぉおおッ!!

「・・・ん、なんだ?」

「なんだじゃないわよ! 時間ッ!!」

「ん・・・? ・・・うおッ?! 急がねぇとッ!!」

こうして、忙しい朝が再び戻ってくる。

(帰ったらちゃんと話さねぇとな・・・)

そう思い、服をさっと着替える。

「急いで急いでッ!!」

「わぁってるってのッ!!」

ついにマネージャーから電話が。

「はいぃッ?!」

『・・・遅い』

「電車が遅れてるんですよッ!!」

『あぁ、そういえば遅れてるね。・・・じゃあ早く来てよ』

がちゃッ。

「・・・嘘も方便だぜ」

「・・・呆れた・・・」

靴を履き、駅へ向かう。

「茂さぁんッ、がんばれぇーー」

近所の人たちの声援を受け、走る。そして、定期で電車に乗り込む。

「・・・はぁ・・・はぁ・・・間に合ったぜ・・・」

『駆け込み乗車はおやめ下さい』

・・・そう放送が流れ、顔から火が出るような思いをした。

・・・席に着き、電車が駅に着くのを待った。

『次はぁ、流鏑馬(やぶさめ)ぇ、流鏑馬ぇ。お下りの際は、』

ガッチャーンッ!! ・・・ガラスが割れるような音。いや、・・・ガラスが割れた音だな。少し辺りがざわつく。

そして、ガッチャーンッ!! ・・・もう一度音が鳴る。

ドンガラガッシャーンッ!! ・・・今度は派手な音。野次馬が邪魔で何が起きているのか見えない。

「なんだ?」

「ケンカか?」

「車掌さん止めないの?」

・・・ただのケンカか。そう思い、待つ。

「・・・きゃぁッ?! 何あれぇッ!?」

「うわッ、なんだありゃ、気持ちワルッ!!」

「何あれー?!! めちゃくちゃキショイんですけどー!」

「・・・見せてくれないか?」

女子大生に声をかけてみる。

「誰すか? ・・・あ、芳養房 茂じゃない、これ!!」

「うっそー?」

「きゃー! ホンモノだーッ??!」

「握手握手ッ!!」

「とりあえず、何があったんだ?」

・・・どいてくれたから、ようやく見ることができた。

「・・・何だ・・・ありゃ?」

それは、・・・形容しがたいもの。敢えて言葉に表すとしたら・・・・・・球体(スフィア)



To be continued...

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