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「ど・・・どうするのよ・・・?」
「とにかく、テレビを見てみよう」
テレビをつけると映っていたのは・・・赤と白のタワー。ドラマをやっているようだ。
「・・・何もないな」
「・・・そう・・・みたいね」
・・・ホッとしたようなガクッと来たような。・・・と、上にテロップが流れる。速報のようだ。
『首相官邸が襲撃される 村本首相は外出していて無事 犯人は現場から逃走したと見られ捜索中』
・・・本当に、・・・起こった・・・?
「・・・まぁ、やれやれ・・・だな・・・」
「やれやれじゃねぇよ!! もし外出していなかったら確実に首相は・・・!!」
と、龍醐さんは俺に食いかかる。
「そ、そうだな・・・。・・・悪かった・・・」
しかし、今回の一件で、首相に対する警備は万全になるだろう。
「・・・ところで、何だけど。・・・お兄ちゃんのスパイしていたところにいたのは何人?」
「基本的に六人だな。人じゃねえけど。そいつらは、『あのお方』という人物・・・いや、存在を崇め敬っていた。・・・つまり、そいつが彼らをまとめている、・・・ボスだろう」
そして龍醐さんは、メンバーについて話してくれた。
・・・どうやら七つの大罪のラテン語読みがコードネームの由来になっているようだ。で、・・・なぜか龍醐さんは憤怒をあらわす『イーラ』・・・。
「・・・まるっきりその通りじゃないですか」
「う、うるせぇッ!!」
ほら、すぐカッカする。ほんまいややわぁ。
「心の声が京都みたいになってるわよ・・・?」
「・・・俺は帰る。首相もくそもあるか、チキショウ」
「さいならぁ」
・・・バタンと大きな音がする。・・・癇に障ったようだな。
「どうして帰っちまったんだよ?」
「茂・・・あんた冗談で言ってるのよね」
「もちろん」
・・・会話についていけず、目を白黒させていた方舟が、小さくあくびをした。
「・・・ちッ・・・嫌な奴だぜ・・・」
・・・歩いていて、少し違和感を覚えた。・・・右胸のポケットに何か入っているようだ。何もいれた覚えはないんだが・・・。
「何だ? ・・・何か入れたっけな・・・?」
・・・取り出して初めてそれが何なのか分かった。・・・この形状、大きさからして間違いない。これは―――盗聴器だ。インヴィディアかアヴァリティアが念には念をいれて仕掛けておいたに違いない。つまり、バッチリ会話は盗聴されたと言うことだ。
「・・・くそッ!!」
地面に盗聴器を投げ捨て、靴で踏み潰す。しかし、もう遅い。もう会話は・・・
「ばっちり、聞かせてもらいましたよ・・・」
後ろから、小さな電撃が飛んできた。それを喰らってしまい、少しガクッと来た。
「ぐッ・・・インヴィディアッ・・・!」
「・・・イーラ・・・よくも、裏切ったなッ・・・!」
「イーラ、か・・・いまとなってはその名前は違うぜ。俺は、辰星 龍醐。お前らを騙してて悪かったとはこれぽっちも思っちゃいねぇ。お前らは間違っている。世界を壊して、誰が、何が得をすると言う?」
「へへ、『あのお方』が得をするだろうよ。俺はあのお方のためなら我が身も滅ぼすぜ」
「あのお方あのお方って、一体誰なんだよ!!?」
「さぁ? くくくくくくくくくくく・・・」
瞬時に、俺は今すぐにすべき事を理解した。
・・・「・・・よし」
「どうした?」
「・・・さよならグッバイハッピーエンドオオオォォオオオオォオオッォオオ!!!」
「あ、こら、逃げるなぁ!!」
「どうせ追いつかれたら終わりだ。なら、地獄の果てまで逃げるさ!」
そして、アヴァリティアまで来やがった。体が電撃を食らったせいで思うように動かない。
「くそ、・・・って、行き止まりかよ!?」
「・・・では、裏切った罰を与えましょうか・・・」
そして運悪く袋小路。
「さて、もうおとなしくしたらどうです? もう逃げられ―――」
「俺は逃げるぜ、こんな状況でもな。俺、まだ独身なんだよ」
「え?」
唖然とするインヴィディア。
「そうですか・・・ならば、独身のままあなたの人生に幕を下ろすまで」
「やなこった!!」
―――俺は、一瞬ためらった。この忌むべき力はできれば使いたくない。だが・・・。
「じゃあ、また会おうぜ。そんときゃ、お前らのくたばった様子を拝ませてもらうぜ」
「・・・お、おい! ここで力を使う気かよ!? 見られちまうぜ!? いいのかよ!!?」
「ここは誰も見えないぜ。そんでもってこの時間帯だ。確か、今日は駅前で駅弁祭りだぜ?んじゃあな、・・・・・・さいなら」
・・・俺は、心の中のストッパーを外す。
そして、俺は忌むべき力・・・龍の力は、解放された。
「くそ、追いかけ・・・」
「待てッ! 焦るな、インヴィディア!」
「だ、だってよぉ・・・」
「大丈夫だ、ちゃんと『PDA』をつけてるからな」
「・・・『GPS』だろ」
「・・・何か、イイマシタカ?」
「いや、なぁんにも言ってませんよ、はは・・・(怖い・・・)」
・・・ようやく、俺は奴らを振り切った。何かが飛んでいるときに落ちたが、気にしない。
『ぐぅ・・・クラクラ・・・するぜ・・・』
俺は・・・地面に降り立つ。どこかの山中だろう。
そして、『力』を抑え込んだ。
「・・・はぁ・・・はぁ・・・」
・・・誰かの足音が聞こえる。
「・・・見つかっちまった、・・・か・・・。・・・すまねぇ・・・さち・・・・・・え・・・」
俺は妹に謝りながら目を閉じた。・・・そして、意識がふっと途切れた・・・・・・。
毎週木曜日はいつもハイキングという名の、登山をしている。目指すはエレベスト! ・・・と言いながらも、この前茂に『エレベストエレベストってうっせぇなぁ、エベレストだろ』と言われちょっとイラッときた。そういう自分もヒマラヤのこと平山って言ってるくせに!
―――そういえば、今日は駅弁フェアって本当だろうか? 降りたら一度行ってみようと思っている。
「・・・ちょっと喉渇いちゃったなぁ。水でも飲もっと・・・」
・・・突然、突風が吹く。
「わきゃあッ!? ・・・あぁ、びっくりしたぁ・・・」
木が二、三本折れるほどの風。この前のロケのときも、『よく耐えられますねぇ』とADさんが感心(?)していた。私の体の中には母さんの血がたくさん流れているんだもの。柔道も黒帯を持ってるし。茂と蒼真は父さんの血だけど、私は母さんのほうが好き。・・・別にマザコンではないけど。
「・・・あれ? ・・・もしかして・・・人?」
・・・茂みを掻き分けて、様子を見に行くと、・・・見紛ってはおらず、頭を茂みに突っ込んで倒れている人がいた。体格からして、男性だろう。
「ちょ、ちょっと、大丈夫!?」
・・・返事がない。あぁ、こんなときに限って携帯がない!
「ごめんね、晃治!」
彼氏の名を呼び、茂みから男性を引きずり出した。
「・・・ちょっと、・・・イケメンじゃん!」
そして、・・・さっと男性を担ぐと、スキップしながら亜麻弥は下山していった・・・。
To be continued...