五日目
「あーっ! 疲れたー!」
部屋のベッドに寝っ転がる。
ばふばふっとしてから、大の字になって天井を見た。
「ほんっっっとうに疲れた……」
なんでこんなに疲れてるんだろう。
「いや、犬塚のせいか」
席替えで隣になったのが運の尽き。いや、アレキサンダーに突撃された時からか?
まあ、どっちにしても、一時間目に消しゴムを貸してから、放課後までの六時間全部ちょっかいをかけられた。
そして一緒に帰ると、部屋までお隣同士って。
ははは。笑えねえ。
これからもちょっかいかけられそうだ。
……疲れたから寝よ。そうしよう。
ピンポーン
ったく、誰だよ。俺は眠いんだよ。
ピンポンピンポンピンポーン
居留守使おう。
ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピンポーン!
「うるっせえよ!」
誰か知らねえけどうるせえ!諦めろよ!
仕方なくベッドから起きて
「あっ、いたんだ。よかったー」
「いるよ。そんなに時間経ってないだろ?」
「え? もう夕方だよ?」
「え?」
確かに辺りは夕日が差していた。
「しまった。晩飯買いに行ってねえや」
「ふっふっふっ。そこで奥さん、私の出番ですよ」
「なんだその口調は。あと俺は奥さんじゃねえよ」
犬塚は持っていたタッパーを差し出して来た。
というか、押し付けて来た。
「筑前煮!」
「お、おう。ありがとう?」
「どーいたしまして! 後で感想教えてねー!」
……嵐のように去っていった。
がしゃん、と隣の部屋から鍵をかける音が聞こえた。
まあ、いいか。
こちらもチェーンをかけて、部屋に戻った。
食卓テーブルに座る。
晩飯の心配がなくなった。
ありがたく食べさせてもらおう。
「筑前煮か。久しぶりに食べるな」
俺は一人暮らしをして、全くと言うほど料理なんてしない。
だから筑前煮なんて、本当に何年かぶりに食べる。
「おお……」
タッパーを開くと人参やレンコン、ごぼうなどの極一般的な筑前煮だった。
「いただきます」
そこでふと思う。
あれ? これって誰が作ったんだ?
……と。
失礼だが、犬塚が料理が得意とは思えない。
なら誰が?
と考えるが、時はすでに遅し。
俺の口の中にレンコンが放り込まれた。
コリコリ、と歯応えがいい。
そしてーー。
「うま」
気がつくと、筑前煮を全て食べてしまった。
インスタントの米でも作ろうと思ったが、まあ、美味かったから良しとしよう。
今日は疲れたから、ラノベを読むのも今日はなしだ。
適当にシャワーを浴びて、ベッドに入って眠った。
その日はいつもよりぐっすりと眠ることができた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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