8 眠りから覚める少女は
「……んぅ」
目が覚めます。
えーっと。
あ、そうでした。
ご飯の途中で眠くなって、寝ちゃったんでした。
お腹は…うん、空いてます。
体を起こして、お皿に向かいます。
なんとなく、頭も身体もいつもよりスッキリと…
「ふぁら、ほめざめはひら?」
体を起こして
目の前を見たら
「うん、なんとも無いようね」
夜みたいな黒の髪と黒のワンピース。
たぶん、私と同じくらいの背。
そんな誰かが、私のご飯を食べてました。
「…知らない人が、います…?」
「改めて。はじめまして。私は百毒の精霊。名はリティ。よろしくね」
「あ…。え…っと。ファルマ、です」
「うん。ファルマね。それで、ファルマはどうしてこーんな毒を食べてたのかしら?」
どく…
…!毒!
具合悪くなっちゃいます!
「そ、それダメです!食べちゃ、ダメ!」
「あら、心外ね。これで私がどうにかなると?」
「え……。だ、いじょうぶ…ですか?お腹とか…」
「もちろんよ。まぁ、なんでこんな山盛りなのかは、ちょっと興味あるけど」
食べてても、なんともない…。
今日は珍しく何も入ってなかった、とか?
でも、そんなことあるわけないし…
「ご馳走さま。さて、医者ではないけど、一応話しておこうかしら」
あぁ、私のご飯…
精霊さまは、食器を横に置いて向き直します。
「まずは、あなたの体についてかしら。これに入ってた分も含めて、あなたの体の毒は全部処置したわ。ついでに、それなりの健康状態まで引き上げたけど、違和感は無いかしら?」
「毒…えっと…どうやって…?あ、体は大丈夫、です…」
「言ったでしょ?私は百毒の精霊よ。どうとでもなるわ。次、あなたの意思について。簡単に言うと、今すぐ逃げないと大変だと思うわよ?」
「にげ…え…?な、なんで?」
「そうね。あなたが食べたこれ、どんな人間でもだいたい死ぬくらいなのよ?生きてるって知られたら次は何されるんだか」
「……ひぇ」
毒の入った料理は、つらい時もあるけど食べられます。
でも、それ以上のこと…
想像できませんけど、
もし、どこかに行けるのなら…
でも…
「…逃げられるなら、逃げます。どこに…は、考えてませんけど。でも…私は、体が強くないです…」
この部屋から出ただけでも、体力が無くなりそうです。
こんなことなら少しでも頑張るべきだったのかもしれません。
…そんなこと、ちっとも考えてませんでしたけど。
「ふふっ。…いいわ。あなたにその気があるだけで十分よ」
精霊さまは、———リティは私の手を取ります。
「それじゃあ、行きましょうか」
「行くって、どこ…?」
「———冒険、かしら?あっはは、きっと楽しいわよ?」
楽しい。
そっか。
楽しいこと。
うん。
わくわく、してきた。
「えっと、じゃあ…———よろしくおねがいします、リティ」
「———ええ。よろしくね。ファルマ」
ファルマ・リティ「「にーげるんだよーぅ!」」