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5 姉の毒は
少女の姉が用意した毒は、「ヒドラスネークの毒」と「火蜂の炎」といった。
「ヒドラ・スネークの毒」は、その名の通りヒドラ・スネークという魔物が持つ毒のことだ。
その魔物は強力な毒と生命力を持っていた。
その特徴から、不死身の毒ヘビであるヒドラの眷属と呼ばれることもあった。
その毒には、毒そのものに高い生命力と自立した意思があるとされている。
一度入れば、身体の至る所を破壊し続けていき、内外問わず大量の出血を引き起こす。
「火蜂の炎」は、フレイムホーネットという魔物が持つ針毒のことだ。
フレイムホーネット自体は身体も小さく、魔物としてそこまで高い戦闘力も生命力も有していない。
その危険性は、その針に含まれる毒にあった。
生物にこの毒が入り込むと、異常な高熱と免疫異常を引き起こす。
その間、対象はまるで高熱の炎に焼かれたように悶え苦しむという。
少女の姉は、「できる限り苦しみのある死」を望んだ。
二つの毒は、魔物由来のものでも最適の選択だった。
大量出血も異常な高熱も、逃れられない苦痛を確実に与える。