欲張りな木こり
はじまりはじまり~
昔々、ある所に正直者の木こりがいました。
ある日、木こりが湖の近くで木を切っていると、手が滑って、斧を湖に落としてしまいました。
斧は湖に沈んでしまいましたが、その斧は木こりの唯一の仕事道具でした。
木こりが諦めきれず、湖を覗き込んで悩んでいると、湖の中から神様が現れました。
神様は木こりに訊ねました。
「木こりよ、どうしたのだ?」
「手が滑って、1本しかない斧を湖に落としてしまったのです」
木こりが答えると、神様はどこからか3本の斧を取り出して、訊ねました。
「お前が落としたのは、この金の斧か?」
「いいえ、違います」
「ではこの銀の斧か?」
「違います」
「ではこの木の柄がついた鉄の斧か?」
「はい、その斧です」
「お前は正直者だ。3本とも斧をやろう」
「ありがとうございます」
木こりは3本の斧を大事に持って帰りました。
▽
数日後、その木こりの家に、1人の欲張りな木こりが訪ねてきました。
欲張りな木こりは、部屋にある金の斧と銀の斧を見て、訊ねました。
「この金の斧と銀の斧はどうしたんだ?」
「この間、神様から貰ったんだよ」
「そうか。いいな、おれも欲しいな…」
▽
次の日、欲張りな木こりは湖の近くで木を切っていました。
そこは、金の斧と銀の斧をくれた神様がいる湖でした。
欲張りな木こりが木を切っていると、手が滑って斧を湖に落としてしまいました。
すると、また神様が現れました。
「木こりよ、どうしたのだ?」
「手が滑って、1本しかない斧を湖に落としてしまったのです」
欲張りな木こりが答えると、神様はまたどこからか3本の斧を取り出して、訊ねました。
「お前が落としたのは、この金の斧か?」
欲張りな木こりはしばらく悩んでから、答えました。
「神様。私が落としたのは、木の柄がついた鉄の斧です。でも、私はその金の斧が欲しいのです。どうか金の斧を貰えないでしょうか?」
神様は言いました。
「お前は欲張りだが、正直者だ。3本とも斧をやろう」
「ありがとうございます」
こうして、欲張りな木こりも金の斧と銀の斧を貰えましたとさ。
欲張りでも、悪いことをしなきゃいいんですよ。