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第8話 ガーゴイル1

勇者と少女は小高い丘の上にいた。丘の下には人間の集落がある。風車や水車が回り美しい場所だ。

だが彼らは木陰で休んでいた。今向かっても日が暮れてしまう時間だ。だったらここで野宿して、早朝出立しようという算段だった。

勇者は幼いながらも煮炊きの準備をする少女の手伝いをした。


「えらいわ。勇者さま」

「えへへ~。ねーお仕事終わったらあそぼー」


「ええ。いいですわ」


食事の準備も終わり、日のあるうちに二人は食事を始めた。

日が落ちたらすぐに暗闇の世界になる。眠らなくてはならない。

食事が終わると勇者は少女の方を向いてニコリと笑った。


「おねえたん、あそぼー」

「ええ。何をして?」


「んーと。んーとぉ……」


特段決めてはいなかった。鬼ごっこ。かくれんぼ。

わくわくするような遊びが彼の頭の中を駆け巡る。

かくれんぼは好きだが、隠れる方も、探す方もひとりぼっちになってしまう。それは怖かった。お化けに食われる。それを思うと身震いする。今までさんざん魔物を倒してきたにも関わらず。


「あのねー、じゃオニ……」

「待て待て待て」


鬼ごっこと言おうとしたときに別の声。

二人は声の方を見たが誰もいない。


「ここだ。ここ」


それは空から聞こえた。

見上げてみると、醜い顔だが筋骨隆々とし、背中にコウモリの翼がある。ガーゴイルという魔物だ。

もともと石で作られた屋根飾りであったが、魔王の魔力により命を与えられた。石であったために固い。そして空を飛んでいる。

かなり厄介な部類の敵であった。

それが勇者の前に舞い降りる。少女は勇者の身を抱いてかばった。


「まぁまぁそう恐れるな。オークの戦士から聞いたのだが、君は勇者なのであろう?」

「ええ。そうですわ。あなたは?」


「オレはガーゴイル。勇者が楽しい遊びがお好きなようなのでまぜて貰いに来た」


少女はこの魔物の嫌らしい笑い顔に嫌悪を覚えた。おそらく狡知(こうち)に長け、勇者をだまくらかそうと言うことに気付いたのだ。

だが、勇者は遊んで貰えるのだと、目をキラキラさせていた。


「なに? 何して遊ぶの?」

「勇者さま!」


「ほっほっほ。さすが勇者さまだ。話が早い。オレはこの通り空を飛べる。勇者さまを空の旅にお連れすることが出来る」

「空? お空を飛ぶの~!?」


勇者の興奮は最高潮。ドキドキが止まらない。

少女がいくら止めようとしてもこれでは泣き叫ぶだけだろう。

少女は頭を抱えた。しかし勇者なら何とかなるのかも……。

そう思って勇者をチラリと見る。

勇者は震えながら下唇を噛んでいた。これは我慢をしているのだ。なんの我慢かと思ったとき、彼は口を開いた。


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