第76話 変態勇者4
ハスキーは朝食をとったらシロフと任務交代となる。彼は食料箱の中に卵を入れるとシロフを起こしに行った。
勇者は卵を一つだけ持って、視線は一点に集中していた。
そう。視線の先には食事の準備をして焚き火の前に座っているミュー。今日はスカート姿だ。勇者は卵を一つだけ持ってミューへと近づいた。
「あのう。これ……」
「あら。勇者さま。タマゴを持ってきて下さったのですね。エライわぁ」
そう言って勇者の頭を大きく撫でさする。勇者は赤い顔をして下を向いた。
立て膝のミュー。少し下がればスカートの中身が見えるかも知れない。彼はツバを飲み込んで少し後ろに下がったが、炎や薪が邪魔でサッパリ目的のものは見えない。クビを斜めに倒したり、膝を少し落としてみたりしたがもう少しのところで見えないのだ。
「おはようユークどの。食事前に少し遊ぶか?」
心臓が飛び出るほど驚いて振り返ると、そこにはシロフ。
ハスキーはとってきた卵をミューに渡して焼き方の注文を付けている。
「あ、あそぶ?」
「ああ何がいい? 追いかけっこか? かくれんぼか?」
「じゃあ……追いか……かくれんぼ!」
「かくれんぼか」
「かくれんぼ。かくれんぼ」
「そうかそうか。まぁあんまり遠くへ行くなよ。このキャンプの付近にしてくれよ」
「ああ。大丈夫。まかせとけェ~」
「? ああ。じゃあの木のところで10数えてくるな」
ユークはミューのところへ走った。そしてミューを立たせる。
子どもながらの無邪気な隠れ方。前に町でそんなことをしている子どもを思い出したのだ。
「あら勇者さまどうしました?」
「かくれんぼ。かくれんぼ」
「え? かくれんぼだから何です?」
勇者は立ち上がったミューの後ろに回り込み、スカートを上げてその尻肉に貼り付いた。
「キャ……ッ!」
「ムフゥ。もーいーよー!」
もはや光の勇者の見る影もない。ただのスケベだ。彼は尻に埋もれたままニヤけ顔をした。
子どもだから許されると言う思いが彼の欲望を開放する。
しかしすぐさまその頭に重い拳が振り下ろされ、頭を抱えてその場にうずくまってしまった。
拳を落としたのはコボルド隊長、ハスキーだった。
「ボーズ。朝食の準備の邪魔をするんじゃねーよ。遊ぶなら働いてる人の邪魔しちゃダメだっていつも言ってるだろ? そんなにケツがいいならオレのケツに貼り付いてろ!」
そう言って立ち上がり、勇者の顔を自分の尻に押し付ける。
ちょうど尻の割れ目に鼻が入ってしまい、獣臭さも手伝って、その場に後頭部から倒れ込んでしまった。
「ありゃ? ボーズどうした?」
「あ。ユークどのみーつけた。今度はユークどのが鬼ですよ~。アレ?」
勇者はしばらく目を覚まさなかった。