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第71話 ピクシーニンジャーズ

勇者一行は遠い東の都ムングレロをさして進んでいた。途中には点々と人間の集落があるだろうが、それは一つも見当たらない。

そう言うときは野宿するしかない。

前は三人だったが、今は四人。

勇者とミューを除いたハスキーとシロフの二人が代わりばんこに夜の見張りをした。

その晩はシロフが見張りをしていた。

焚き火に枝を入れて、火を絶やさないよう気を配る。

三つのエグラストーンの力も偉大だ。弱い敵や虫など寄せ付けない。旅には素晴らしいアイテムだとシロフは思った。

それを草陰から見つめる三つの影があった。


「オレはピー」

「オイはクー」

「オレはシー」

「三人合わせて、オレたちゃピクシーニンジャーズ。んーわぉー!」


今の勇者と同じくらいの背格好。黒装束に身を包んだ子鬼のピクシーニンジャーズ。登場のポーズがビシッと決まった。


「ん? 誰かいるのか?」

「や、やべ!」


シロフに気付かれた。声が大きすぎたのだ。明らかに最後の「んーわぉー」は余計だった。

すかさず、シーが己の小さい鼻をつまむ。


「にゃ、にゃお~……」

「なんだ、ネコか」


ごまかせた。シーは己の声帯模写が成功したものだから、仲間の二人に鼻を鳴らして威張って見せた。


「な、何だそれくらい」


ピーはシーが威張るのが気に食わず、自分も眉間にしわを寄せて声を出した。


「ほー ほー ほー ほー」

「ふむ。フクロウか」


「それみろ!」


今度はピーが鼻を鳴らす。

クーも二人がやっているものだから自慢の物真似を披露した。


「ふるっふー ふるっふー ふるっふー」

「ん? 鳩? 夜なのに、鳩が活動するかな?」


「ば、バカ!」


鳥目と言うように、鳥で夜間に行動するのは少ない。

このままではシロフに気付かれてしまう。


「なんとかしろ。なんとかしろ」

「えーとですねぇ、今のは鳩じゃなくて、キジバトって言う夜鳴く種類の鳩です」


「誰?」

「お前、バカかよ」


シロフに完全に気付かれた。

誰とか言われている。三人は大変に慌てた。


「それに、キジバトだったら鳴き声が違うなぁ。デデポッポと鳴くはずだ」

「そーだよ。そう」


クーは挽回を目指して物真似した。


「デデポッポー デデポッポー」

「なんだキジバトかぁ」


成功。三人はハイタッチして喜んだ。


「なんかたいくつだから、他の鳥の声が聞きたいなぁ」


シロフからの振り。三人は調子に乗った。


「チッチッチッチ」

「ポーイポーイポーイポーイ」

「キュキュキュキュキュキュキュ」


なかなかの幻想的な鳴き声。まるでジャングルにいるよう。

そのうちに、森の中の鳥たちも朝かと思い目を覚まし、同じように鳴き始め、山々に鳥の大合唱が響き渡った。


「こりゃたまらん。最初は良かったがうるさすぎる。猛獣でも現れれば静かになりそうだ」


ピクシーニンジャーズは大変ノリが良かった。

客が猛獣の声を所望している。声を合わせて山々に向かって吼えた。


「ガーガーガー!」

「うおーーー!」

「がおーーー!」


その声に驚いた鳥たちは、一斉に飛び立ってそのうちに静寂が訪れた。


「ぐるるるるるるる」


近くから怪しく光る二つの目。

明らかに縄張りに入り込まれて怒った猛獣の目だ。

それがニンジャーズの近くにいる。

三人は互いに抱き合って震えた。


「ふむぅ。こりゃドラゴンでも来ないと逃げないかも知れないな」


シロフの声がニンジャーズへのアドバイスとなった。

三人は命がけの声帯模写を行った。


「ギャロォォォーーー!!」

「グギャララララーーー!」

「ゴァオーー! ゴァオーー!」


「ギャン!」


猛獣らしきものは驚いて草を跳ねて去って行った。

三人の体は汗がだくだく。余りの緊張でそこに気絶したようになってしまった。



次の朝。ハスキーが夜通し見張りをしていたことを労った。


「どうだ。なにもなかったか?」

「ええ。隊長。なにもありませんでしたよ」


実はシロフ、ピクシーニンジャーズが潜んでいたことに気付いていた。エグラストーンにより近寄れないであろう三人をからかって退屈しのぎをしたのだった。

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