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第67話 大魔法使い

その頃、勇者は時計台の中腹を登っていたが声がするのでちょうどあいている窓から下を見てみるとハスキーがジエンガを倒し、街の住人がジエンガの喉元からナイフを抜いてハスキーにうやうやしく渡しているところだった。

やはりハスキーはすごいと思い、一つの脅威が減ったことに安堵しながら吊されているミューを見上げた。


そこには宙に浮いて、怒りの表情を浮かべているシェイドの姿も合った。彼は何も言わずにミューの体を切ろうとしていた。


「やめろ!」


シェイドは声の方を冷たく一瞥する。そして、大鎌の動きは止めない。


「止めるわけないよね。お前たちは弟を殺した。この女を殺さねば腹の虫が治まらん」


シェイドの大鎌がミューの首に振り下ろされる。

勇者もミューも目をつぶった。


だが、ミューの首の前で大鎌は止まってしまっている。

それ以上、切ろうと突こうとシェイドの大鎌は彼女に危害を加えることは出来ない。


「おのれ、勇者と同じように12柱の加護があるのだな? まさか貴様、勇者の子を宿したな?」


今度は勇者とミューは顔を真っ赤にして叫んだ。


「宿してません!」


シェイドは大鎌をミューを吊す縄の方へ移した。


「よせ!」

「その身は大鎌を寄せ付けなくとも落ちればどうかな? 大地は魔物じゃないから、神々の加護も及ぶまい」


勇者はミューを急いで助けんと、すぐさま窓から首を引っ込めた。

時間がない。勇者はその場でバックステップを切り、目の前の壁に向かって聖剣を振ると、石壁は生き物のように整列して横に避けた。大きく空いた壁から身を出すと、ミューの縄がちょうど切られ、落下が始まったところだった。


「キャ──!」

「ミュー! グラジナ起きろ!」


たちまち聖剣はドラゴンへと姿を変え、勇者を乗せて回転しながら大空へ飛び上がる。そこへ落ちてきたミューを勇者は両手で受け止めた。


「ゆ、勇者さま!」

「待たせたね。ミュー」


グラジナは高く高く舞い上がる。


「くっ! ドラゴンを召喚するとは! まぁいい。一時退却して未来に賭けよう。ふん」


シェイドはマントを翻して闇夜に消えようとしている。

ミューはそれを指差した。


「ダメよ。シェイドが逃げるわ。どうやって倒すのです? 聖剣グラジナはドラゴンになっております」

「もちろんグラジナさ。見ていなよ。彼は最強の剣でもあるし、ドラゴンの王でもある。そして、最高の魔法使いなんだ」


「え?」


グラジナはむにゃむにやと魔法の契約の言葉を唱えている。それは忘れ去られた古代の言語。時折我々の知る神や剣、炎を示す言葉もあったが後は全然意味が分からない。

だが天から降り注ぐ炎の槍。

それがシェイドを囲み檻の形となり逃げられなくなった。


「クソ! あの時ひと思いに殺していれば!」

「自分の性格が徒になったなシェイド」


グラジナは最後の契約の言葉を唱えて目を見開く。


怒りの日輪(ペタボルガ)!」


たちまち炎の槍はシェイドに向かって突き刺さり、破裂して大きな炎の玉となった。それはまるで太陽のよう。

だがシェイドは最後に一言叫んだ。


「勇者よ! 呪われろー!」


シェイドは黒い炭となり、粉々に塵と砕けて何も残らなかった。


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