第65話 勇者処刑作戦3
「勇者さま!」
叫ぶミューの横で、ハスキーは体を折り曲げて解放された口を開け、自分を吊す縄に噛みついていた。縄を切ろうと言うのだ。
シェイドはそれに気付いて苦笑した。
「ふはは。健気だねぇ。勇者の元へ行こうと言うのか。望み通りにしてやろう」
シェイドの鎌がハスキーを結ぶ縄にあてがわれる。それを左右に動かすと、縄がブツと言う音とともに二つに分かれる。
「ハスキー!」
「ふはは! 勇者の元に行きたい仲間を解放してやったぞ!」
ハスキーの身は高速で時計台から落ちてゆく。だが彼は空中でひと回転して時計台の壁を蹴り、大きな屋敷の屋根の上に音を立てて落ちる。その衝撃で手足を縛られていた縄も緩み、ハスキーは瓦が飛び散る中、身を起こしてそれをほどいた。そして痛そうに体を抑え立ち上がり、それより低い屋根に飛び移った。
「ふはは。見ろよ。全身の骨が折れても勇者を守りに行こうとするぞ!」
シェイドが笑うのも無理は無い。
ハスキーは満身創痍だ。フラフラになりながら勇者の元に向かおうとするが屋根から滑って背中から落ちた。
「ひゃはっ。これはいい」
笑う二人の道化師。彼らの目に写るのは魔法で一押しすれば全滅する勇者パーティ。
その後で街の人間をゴーレムでも使ってゆっくりとなぶり殺しにする。
ジエンガは、一つの魔法で二人を殺そうとハスキーの到着を待ち、両手の親指と人差し指を立て枠を作り、片目をつぶって二人をその枠の照準に入れた。
「オーケーオーケー。二人まとめて死ぬがいい」
ハスキーは足を引きずって勇者の前に立った。
「ハスキー……」
「へ。クソボーズ。オメーがここで死んだら使命を果たせるかよ。剣を取れ。ミューもそれを望んでる」
「し、しかし」
「いいからここは任せて、さっさと時計台の階段を登ってミューを助けに行け」
「わ、分かった」
「へへ。そう来なくっちゃな」
いつの間にか、ジエンガの前には大きな火球が出来上がっていた。二人はおろか、街の人々も大勢巻き込むほどの大魔法だ。
「くっ。これを受けたら……」
「バーカ。オレを信じろ」
「え?」
「オレを信じて背中に隠れてろ」
「し、しかし」
ハスキーは動く片腕を広げて無理矢理勇者の前に立つ。ジエンガは強がる低級魔物のコボルドを笑った。
「ひゃはっ。面白い。面白いね~。どうやってかわすのさ? くらえ! ダイボルガ!」




