第63話 勇者処刑作戦1
その様子をシェイドとジエンガの二人は時計台の屋根の上から見ていた。
その近くには縄で縛られたミューとハスキー。口には猿ぐつわが噛まされている。
横笛の道化師、ジエンガは興奮して歯噛みしていた。
なぜなら彼が横笛を吹いてオーガを呼び出し、ストーンゴーレムを作りあげたからだ。自分が呼びたしたもの、作り上げたものをまたもや簡単に破壊されて怒ったのだった。
「むう! 私が丹精込めて作ったゴーレムたちを!」
「ふふ。やはり12柱の神々の祝福は侮り難し」
「シェイド。こうなったら闇討ちを仕掛けよう」
「おいおい。それより、この二人を使ったらどうだ」
親指を立てて人質二人を指差す。
ミューは恐怖の目。ハスキーは怒りの目。
だが猿ぐつわによって声が出せない。
「はふー。いい目だ。どちらも気に入った」
「ひゃはっ! まずはこの屋根の上に縄で吊そう」
「いいな。いいな。早速やろう!」
時計台の下では勇者の寂しい宴。
時計台の上では道化師の狂気の宴。
時計台の屋根の上にはポールの屋根飾りがあり、シェイドとジエンガは、そこに縄をくくりつけ、ミューとハスキーを吊す。
屋根から下ろす前に二人の猿ぐつわを外してやった。
「ひゃはっ! いい声で叫べよ。勇者を哀しませろ」
「ふん。誰が。ボーズの足手まといにはならん。さっさとここから落とせ」
「ひゃはっ。望み通りにしてやるよ」
その時、闇夜に花火が上がった。
夜の祭りを知らせる合図。
それとともに勇者を讃える声が聞こえたが、ザワつきながら声が止まる。
「な、なんかいる。時計台の屋根の上に」
そこには笑いの化粧をした道化師の二人。
魔王軍の大魔法使いだ。花火の明かりは一瞬でその不気味さをなおさらあおった。
「ひゃはっ。勇者よ。私はシェイドの双子の弟ジエンガ。ここが貴様らの墓場となるのだ」
「はぁ?」
勇者は立ち上がり目を凝らして声の方を向いた。だが暗くてよく分からない。勇者はダンジョン内を明るくする魔法を唱えた。
「スタール!」
すると、街の城壁が光り出し、辺りは昼間のように明るくなった。
見上げる時計台の屋根には道化師が二人。
だが屋根に吊された人質二人も目に入った。