第6話 オークロード2
しかし砕けたのは槍の方だった。
勇者のフェニックスの羽根飾りのついた金と紫の兜がダメージを与えさせない。
勇者はクフクフ笑っていた。
「おもちろーい! もっとやって~」
「な、なんだと? 槍を折るなんて!」
オークロードも驚いて馬車の中でたじろいだ。
「くふふ。鼻でっかいおじさん」
「何だと?」
そりゃそうだ。豚面なので鼻が大きく正面を向いている。
勇者から見れば滑稽なのであろう。体を小刻みに震わせて笑っている。少女の方からすればまだこの難局から逃れたわけではないので、少し不安があったが勇者が笑うので合わせて笑ってしまった。
オークロードはこの無礼な人間の子どもに制裁を加えたく、後続の騎馬武者も呼んで馬車のイスにふんぞり返った。
「わー。たくさんお友だちがきたー」
「勇者さま、本当に大丈夫?」
「貴様か。無礼なガキめ。褒美に槍をくれてやる」
「ねー。あそぼー。しりとりしよー」
「誰がするか!」
オークの騎馬武者たちは勇者に向かって槍を繰り出すが、勇者に槍が届く前に、厚い壁に槍をぶつけたような衝撃と共に槍が砕ける。12柱の神々の守護はこの程度の槍は寄せ付けない。
武器をなくした騎馬武者たちは驚いて数歩下がってしまった。
オークロードはイラついて部下たちを叱責した。
「何をしているのです。たかだか人間の子どもじゃありませんか。討ち取って丸焼きになさい!」
「そ、それがご領主さま。様子が変です」
「なにも変じゃありません。あなたたちは仕事を疎かにするつもりですね。全員クビにしますよ!」
「それにあの格好……。まるで伝説の勇者のような……」
「なんですって?」
見ると、フェニックスの兜に、聖王のマントに似たようなもの。たしかにそれらしい。腰に帯びているのは子どもらしからぬ、大剣。中身はまだ抜いていない。
オークロードの方にも冷や汗がこぼれる。