第51話 スカム3
中央に近付くにつれ、祭りの飾りも多くなり、露店もたくさん並び始めた。華々しい雰囲気に一同笑みがこぼれる。
「わぁー。人がたぁ~くさん!」
「うふふ。ホントですねぇ」
「おいお前ら、ホットドッグ食うか?」
「うん。食べたい」
ハスキーが一人一人にホットドッグを買って、少しばかり祭りの気分。しかし何かが変だ。
勇者フィーバーは、もっと先で行われているようだ。
「おい。お前勇者か?」
突然尋ねられ、三人は素早くその方向を向くと、鍋をかぶり、青い布をマントに見立てた子どもが三人。
「うん。そーだよ」
「そうか。オレたちもそうなんだ。一緒に勇者ごっこしようぜ」
「うん」
勇者は子供たちに混じって遊び始めた。
他のちび勇者とは違って、どう見ても神々しい装備の勇者ユーク。しかし誰もそれに気付かない。
ミューとハスキーは、勇者が遊ぶさまを見ていると、路地裏からおばさんが二人。小脇のザルには豆と麦。
「勇者さまが気に入って下さるといいのだけど」
来た。貢ぎ物だ。そう思ってミューとハスキーは、立ち上がり一礼をした。
「そんな。大変ありがたいです。どんなものでも勇者さまは喜んで食されます」
そう言うミューの前を不思議そうな顔をして通り過ぎ、街の中央に行ってしまった。
「おいおい。豆ももらえねーのかよ!」
「ま、まぁ貢ぎ物の為に来たわけじゃないし」
「ボーズは人類の平和のために戦ってるのに素通りとはな」
「ホントに中央に何かあるのよ。お祭りだし。行ってみましょ」
二人が立ち上がると、その渦中の勇者は他の子ども達の前に立ちハスキーを指さした。
「隊長どの。敵を見つけたであります」
「ホントだ。魔王だな」
「倒せ。倒せ」
「なにおぅ? クソボーズども!」
ハスキーは両手を広げて威嚇するものの、ノリよくやられ役をやってやった。
地面に倒れると小さな足で踏みつけられるが大して痛くもない。
だが一つだけ痛い一撃があった。
「ぐえ!」
「勇者ユークが魔王を倒したじょ~」
勇者だった。身内の重い一撃に震えながらハスキーは立ち上がった。
「よくもやってくれたな。ボーズ」
「あ! ひゃっひゃっひゃっひゃっ」
ハスキーが勇者の脇腹をくすぐると、勇者は楽しそうにそこに転げ回った。
そして、遊んだ子どもたちと別れ、街の中央に向かうことにした。