第50話 スカム2
街の中央に大きな時計塔が見え、わぁわぁと言う歓声がそちらの方から聞こえる。
「で、出迎えはないわね? 中心地に人が集まっている感じ?」
「わざわざそっちに行くのも恥ずかしいな」
「とりあえず、宿をとって街の有力者が来るのを待つ? 本来の目的は勇者さまが仇を討つためだし……」
「そうだな。まだ呼ばれてもないのに行くのもガツガツしてる感じだしな」
一行はとりあえず宿を探すことにした。
それなりに上等な宿でないと風格を疑われると言うことで、懐と相談して中程度の宿へ向かった。
勇者を先頭に上品ぶって歩き、宿帳へ記入しようとすると、
「ひ。魔物はお泊めすることが出来ません。お引き取りを」
と断られた。宿の外で立ち尽くしてしまう三人。
「歓迎……って感じじゃないな」
「それにみんな私たちに見向きもしない感じ?」
人は大勢いる。果物をたくさん積んだ荷車が街の中央を目指している。だが誰もこちらに見向きもしなかった。
「おっかしいな。とりあえずコボルドのオレでも泊めてくれる宿は無いものか?」
だが、どこもかしこも断られ、三人は街の外れの城壁の近くに小さな古い古い宿を見つけた。出迎えをしたのは老婆が一人。
「あのぅ。勇者さまが一夜の宿を求めています。仲間にコボルドがいますが、人のために働こうとする立派な志を持っています」
「そうかね。コボルドでもなんでも泊まってくれるならありがたや。祭りだってのに一人も客がいなくてね。でも温泉は最高だよ」
「おお。風呂があるのか。またクサイとボーズに笑われちまうからな」
「くふふ。ウンチおじさん」
「なんだと? クソボーズ」
三人はようやく宿の狭い一室で一息つき、足を揉んだ。
しかし何かがおかしい。歓迎という割にはないがしろにされている。
「勇者だと分かってないのかな?」
「恥ずかしいけど、街の中央に行ってこない? そこで始めて歓迎されるのかも」
「そうだな。祭りの雰囲気を楽しむ振りをしながら偶然……みたいな?」
「わぁいわぁい、おまちゅり~」
三人は宿から出て、街の中央に向けて歩き出した。