第5話 オークロード1
西の都への道のりは遠い。そしてその間は魔王のもの。
200年もの間、都市間の人々の交流や流通は難しい。
移動時に魔物に襲われることは死を意味する。
野生の魔物や訓練を受けていないものは討ち取ることも出来るが、訓練を受け、集団で襲ってくるものを撃退するなど至難の業。
なにしろ向こうは十人力だ。こん棒ひと薙ぎで戦況は変わってしまう。
そんな魔物がウロウロしている中を、勇者と少女は歩き続けた。
「あ~。もう歩けない~」
「あら勇者さま頑張って」
「やだ~。ダッコ~」
「ま。甘えんぼさんなんだから。でもダメです。頑張って歩きましょう」
勇者はそこに座り込んで膝を抱えてしまった。
「あら。勇者さま」
「やだ」
「じゃ置いていきますよ」
「やーだー」
少女は数歩進むと、膝を抱えた勇者は泣きそうな顔でその背中を見つめた。
そして気付いた。心配そうに振り返って見ている少女の前から4騎の騎馬武者が現れたと思うと、その後続にきらびやかな馬車が着いてきて、その後ろにまた16騎の騎馬武者。
少女は馬蹄に気付いてそちらに目をやる。
それは人間ではない。みな体格のよい豚の鬼、オークの行列だ。
少女は急いで勇者の元に駈け寄り、手を引いて街道から外れた。
オークの豪族であろう。この辺の領主。いわゆるオークロードというものだ。人間を見たらなにをしてくるか分からない。多勢に無勢。どこか隠れる場所はないか探したが遅かった。
先導する4騎はすでに槍を抜いて二人を囲もうとしていた。
その時、馬車が止まり窓からオークロードが顔を覗かせた。
「これこれどうした」
「あ。ご領主さま。人間です。人間の子どもです」
「おや珍しい。こちらに引き連れなさい」
「は。はは!」
大変に畏れ入って、槍の柄で二人を押して馬車の方に引き立てた。
少女は恐れた顔をしていたが、勇者はどこ吹く風。
ニコニコして遊びモードのスイッチが入っていた。
「くふふ。ブタたんだ」
小声で笑ったが、騎馬武者に気付かれた。
「下郎!」
騎馬武者は槍を振り上げ感情のままに勇者の頭を打ち据えた。
このままではこの幼子の頭が砕かれてしまう!