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第48話 レギオン2

白骨の群れはこちらに近付いてくる。

剣や槍を振り上げて。

ハスキーには為す術がない。自分には一振りの刀。それも錆び付いている。

聖剣グラジナにも剣術を知らんと笑われた。


そこでふと思った。剣術──。

勇者は子供ながらに破壊力のある剣術を身につけている。

あれは勇者の技なのかも知れない。

神々の加護があって始めて出来るのかも知れない。


「リフィト様。どうか私をお守り下さい」


コボルドの神である女神リフィトに祈り、勇者のように刀を脇に構えた。


「たしかボーズはこんな構えだったな。そして飛び上がってひと回転するんだ。そうすると、光の波が敵を斬ってしまうんだったな。信じろ。今の難局を抜けるにはそれしかない」


勇者は足元。敵は目の前。もはや勇者の見様見真似で敵に当たるしかない。


「行くぞ! シャイニングブレイク!!」


ハスキーは飛び上がって大きくひと回転。

すると、光の波が刀から発せられ、動く白骨たちに迫ってゆく。


「で、出た!」


だが、最初からいる一番前の一体の白骨に届く前に光は消えてしまった。


「く、クソ! やっぱりダメか! と、どうすれば……」


しかし白骨のほうで足を止めた。

ザワザワと何かを呟いている。


「勇者の……。勇者の技……」

「我らに平和と安らぎを与える勇者だ」

「勇者が来た。勇者が」


そう言いながら白骨たちは跪いてハスキーに向かって祈った。


「勇者さま。どうか我らの願いを聞いて下さい。魔王の軍隊に殺され、家族のいる国元に戻れなくなった憐れな境遇。どうか魔王を倒し、我々に安らぎを与えて下さい」

「お、おう。任せておけ」


「嗚呼。それを聞くばかりです……」


その声と共に辺りは静寂に包まれた。

周りに骨などない。まるで夢を見ていたかのようだった。

そんなハスキーのズボンの裾を引っ張るものがいる。


「おじたーん」

「ど、どうしたボーズ」


「おじたん、強いね。カッコいい!」

「お。そうかい?」


「お化けを倒しちゃうんだもん。すごいや。ボクも将来コボルドになる~」

「そりゃ嬉しいけどよ。ボーズの方がよっぽど強えーと思うぞ?」


「おじたん、あのねー」

「どうした?」


「おしっこもれた」

「はしゃいでる場合じゃねーや。おいミュー。起きろ。勇者さまは尿いばりで下着が汚れたとよ」


次の日の三人の荷車には旗指物のように勇者の下着が風に舞っていた。西の都までもう少しの道のりだ。

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