第44話 パイソン1
山道を急ぐとようやく荷車が見えてきた。
そして、そのそばではロバが待っている。ハスキーは急ぎ足でロバを労った。
「おお、やはり利口だなオマエは。褒美にトウモロコシをやろう」
リザードマンの城から持ってきた乾燥したトウモロコシを二本出してロバの目の前に出すと、ロバは旨そうに音を立ててトウモロコシを食べた。
その間に、ハスキーは荷車にロバをつける。
「悪いな。荷物が多くなるが許してくれ」
リザードマンの城より得た食糧などの戦利品を後部に寝下入れると、三人は荷車に乗り込んだ。
ハスキーがロバを御してくれる。
ミューはとても助かった。その間に日頃したいと思っていたことが出来る。
早速、前の村で貰った布地で勇者の新しい服を手縫いすることにし、勇者はそれを楽しそうに見ていた。
「ねぇ、おねえたん。それボクの? それボクの?」
「ええ。そうですよ~」
「やったやったー! うれちい、うれちい」
小さな手をパタパタ叩く。
さすがに勇者の服が汗臭くなってきた。下着も二つしかない。
洗濯もなかなか出来なかったがこれで洗濯もできる。
荷車の上は揺れる。針仕事は難しいが慣れてくると徐々に出来るようになってきた。
昼を過ぎると勇者はいつもお昼寝をする。
エグラストーンのお陰で、弱いモンスターやヘビやトカゲ、虫などが荷車から離れていく。
「へへ。リフィト様の加護はすげぇや」
旅が楽になった。
しかし、ロバが立ち止まる。その瞬間、何か異様な雰囲気を感じた。
「何だろう?」
「さっき草がガサガサなったわよね」
「で、でも、エグラストーンの効果で弱い魔物は寄って来れないから大丈夫だよな?」
「強いってことじゃない?」
荷車が停まってしまったので、自然界の音だけしかない。
草や木々が風で揺れる音。
その中で何かが這うような音が聞こえる。
二人は息を飲んだ。