第27話 コボルドと魔法使い3
ミューの近くにいるのは隊長が一人。
「一体なに? 勇者さまの力は無尽蔵なのよ? 勇者さまが友だちだと思っている間にどこかに行った方があなたたちのためよ?」
「ふふ。まぁ今回は純粋に遊びだ」
「あらそう。だったらいいのだけど」
実は、コボルド隊長には作戦があった。小人の魔法使いたちは、挟み撃ちに魔法をかけるらしい。そのために両側に陣取るのに時間がかかっていたのだ。
その内、ミューの鍋の中のものが旨そうな匂いを立て始めた。
遊んでいたコボルドたちも顔を上げてよだれを垂らす。
「おねえたん。ご飯できた~?」
勇者とコボルドたちは火の周りに集まってきた。
「ボク、ワンワンのおじたんのとなり~」
「お、オレの隣かよ」
勇者はコボルド隊長の横にある石に座ってミューが渡す器を持った。
「あなたたち、お弁当は?」
「抜かりない」
コボルド隊長をはじめ、彼らは粗末な服の懐から虫やらトカゲやらミミズやらを出し、串に刺してあぶり出した。
「なによそのお弁当。こっちの食欲が無くなっちゃうわよ。もう。しょうが無いわねぇ」
ミューは荷車の干し肉が入った袋から、大きめの鹿肉の干し肉を出して、コボルドたち一人一人に渡し、勇者には小さくちぎってやった。
「わーい。やったー! お肉だぁー!」
「おいおい、お嬢ちゃん。これって……」
「今日は特別。勇者さまも楽しそうだし。大勢の食事は楽しいものね」
「お、おう」
「おねえたん。おみじゅ飲みたい」
「はいはい。勇者さま。少しお待ちを」
ミューが荷車の水瓶に向かってる間、コボルドたちはしばらく干し肉とにらめっこしていたが、それにかぶりついた。続いてミューは鍋の中にあった野菜と麦の雑炊をコボルドたちにも与えた。
「器はたくさんないから、食べた人は他の人に貸してあげてね」
「あ、ありがてえ」
それぞれが上手に分けて、みんなお腹が膨れた。
勇者は、この昼食が終わると、いつもだと荷車の上でお昼寝の時間だ。ウトウトし始め、目をこすっていた。