第25話 コボルドと魔法使い1
あれからコボルド隊長は、目を覚まし部下を引き連れて勇者を追っていた。
「隊長、もうやめましょうよ。なんかオレたちバカみたいですよ?」
「うるさい。手柄を立ててご褒美が欲しくないのか?」
「しかし、今まで勇者と戦ったものはことごとくやられてるんですよ? 2回も戦って命を拾っただけめっけもンですよ」
「今度はその強運を生かすんだ」
得意の嗅覚を使って勇者を追う。場所はだいたい分かる。
おそらく数時間あれば追いつけるだろう。
「ふふふふ。協力しよっか?」
「ぬ?」
声のする木の上を見上げると、可愛らしい小人が二人。
赤い服を着たのと青い服を着たの。
それがコボルドたちの前にふわりと舞い降りた。
「オレは炎の魔法使いブレイ」
「アタイは氷の魔術師ブリサ」
「魔導師マギョイさまの弟子さ。マギョイさまは勇者にやられた」
「その仇討ちをするのよ」
新たな協力者にコボルドたちは喜んだ。
「しかし、どうやって勇者を倒す?」
「その辺は抜かりなしさ」
ブレイは胸を張って答えた。
「勇者には女がいる。それが勇者の世話をしているんだ。そいつさえいなくなれば、いくら魔法が効かない勇者でも野垂れ死ぬさ」
「なるほと、あの女か……。しかし、勇者はすばしっこいぞ?」
「そこをあなたたちが押さえつける。聞いたわよ。一度は勇者たちを捕らえたんですってねぇ」
「そりゃまぁなぁ」
始めて勇者と相対したとき、隊長は勇者のマントをつかんで捕らえたことがあった。勇者にとっては遊びだったようだが。
ブレイとブリサは顔を見合わせ微笑んだ。
「決まりだね。君たちは勇者と女を捕まえる担当。オレたちは魔法で攻撃する担当。どうぞよろしく!」
コボルドたちと小人の魔法使いはがっちりと握手をした。