第21話 コボルドとトロル1
すると、凄まじい地響きが聞こえてくる。荷車もガタガタ揺れ、ロバは安全そうな場所を探して走り出した。
「な、何かしら……?」
「はーっはっはっはっはーっ! どうやら驚いたようだな」
勇者たちが声の方を見ると、一度戦ったコボルド隊長とその部下たちだ。
だがそれも黒い影の下にある。
見上げると、全身筋肉で覆われた山のように大きなトロルだった。
「わー! おっきいね! おっきいね!」
「ゆ、勇者さま」
「おっきいなぁ。チンチンも大きいのかな?」
「勇者さま?」
「ボクのは小さいんだ。ほらー」
そう言ってズボンを下げ求婚したばかりの少女ミューに見せた。今まで何度も見てきたが、今回ばかりは恥ずかしくて顔を手で隠した。
「チンチンの話はいいわい! 小僧!」
「ワンワンのおじたん!」
「ワンワンのおじたんじゃねーわー」
「ねぇ、遊ぼー」
「遊ばない!」
「なんで?」
「オマエ勇者だろう」
「そーだよ」
「オマエを討ち取れば魔王さまより、たんまーりご褒美がいただける」
「なんで?」
「なんでって……オマエは敵だからだよ!」
「なんで?」
「……なんで……うーん」
「……隊長。真面目に答えなくてもいいのでは……」
「あっそうか! くそー。ついついコイツのペースにノセられちまうぜ!」
「ねー。遊ぼー」
「遊ばない! ふっふっふ。オマエと遊んでくれるのは、このトロルの旦那だ」
トロルは大きく雄叫びを上げた。
大男、総身に知恵が回りかね。
トロルとはそんなモンスターだ。巨人ではあるが、人とは違い頭が弱い。だが怪力だ。暴れれば人の集落など二つ三つ簡単に潰せる。
コボルドたちは、トロル上手くおだててここまで連れてきた。
なぜ、コボルドたちは正確に勇者たちの場所がわかったのか?
彼らは犬に似ているのは、なにも姿形だけではない。嗅覚も犬に似て優れているのだ。
一度覚えた勇者の匂い。これで追いかけてきたのであった。