もうヤダ!帰る!(6)
なーんか、ナタカラ国に来てから色々ありすぎてすっごい疲れた。
てか、このベッドふかふかすぎ。
これ...あれじゃん?人をダメにするやつじゃん?
とかなんとか考えてると侍女達が朝の支度をしに部屋に入ってきた。
バタン!!
支度が終わったタイミングで勢いよく扉が開いた。
え、壊れてない?大丈夫かな。
と思いながら扉を見るとアルライナがすごい形相で私の腕を勢いよく掴んできた。
慌ててやってきたマミュウラ様に止められ手を離したがすごく怒っているようだ。
「えっと、なんでしょうか?」
顔をひきつらせながらリシャが要件を聞くと
「あんた、もう帰るつもり?」
アルライナには帰国日を伝えていなかったから焦ったのだろう。
「あー、えーっと、はい。ハルス様はベルナーレ皇国の第2王子様ですし、私も聖女ですので国を長く離れるわけにはいかないのです。」
と告げるとアルライナにしては珍しくしゅんとした。
その様子に少し申し訳なくなり
「帰るのは午後ですし、まだ少し時間はありますよ」
と声をかけると「そうよね!」と息巻いて急いでハルス様の部屋へと走っていった。
アルライナが出て行ってすぐレナタ様のことを思い出して部屋を尋ねる準備をした。
マミュウラ様は不服そうだったけどギスギスしたまま国を出るのはなんだか胸が痛い。
なんと声をかけるべきか悩みながら歩いているとレナタ様の部屋についた。かなり近い。
意を決してノックするとすぐ扉が開いた。
「待っていたぞ!リシャ!」
てっきり落ち込んでいると思っていたのにものすごい笑顔で受け入れられた。
呆気に取られてぽけっとしていると
「さぁ、早く座れ!」
と何故かレナタ様の隣に座らされた。やけに距離が近い。
「して、なんの用なんだ?」
と不思議そうに聞かれた。
「あ、えっと、夕食時に体調が優れないと聞いたので...」
「なんだ!心配してきてくれたのか!リシャも存外、我を気に入っているのではないか?」
レナタ様が笑うと護衛で着いてきていたマミュウラ様がムッとして
「聖女様は皆に優しいので」
と一刀両断。きっとブーメランだったことだろう。
「あの、昨日は色々あったので本当に心配していたんです。元気になられて本当に安心しました。」
リシャがそう告げるとレナタ様は何やらすごく暖かい笑顔をリシャによこしてくる。
少し照れて俯いたリシャの手をレナタ様が握り
「一晩考えたのだ。どんなに考えても結局はリシャが好きだという気持ちしか残らなかった。」
すごく真剣に話すギャップにリシャはますます照れる。
「我は何よりもリシャが好きなのだ。リシャより大切なものなどない。リシャが望むなら何でもしよう。」
と真剣に告げられた。
このなんとも真っ直ぐな姿が異様に前世の兄を思い出す。
兄なんて嫌いだとずっと思ってはいたが結局は嫌いになれなかった。
レナタ様もきっとそうなんだろう。
「ありがとうございます。お気持ちは嬉しいのですが、私はレナタ様にそういうお気持ちを返すことが出来ません。なので、まずはお友達になりませんか?」
リシャがそう答えると。
「......なるほど、まずは友達から初めて恋人になればいいんだな」
(は?)
拒否があまりにもオブラートすぎたのだろうか。
どうやら恋人前提のお友達だと勘違いされたらしい。
「よし、そうと決まれば明日はピクニックに行こう!明後日は〜」
と何やら予定を決め始めてしまったので
「すみません!午後にはこの国を経つのでこの国にいられるのは今だけです!」
とリシャが言うとハッとしたレナタ様が「なるほど」とつぶやき、指を鳴らすとどこからともなく現れた従者に
「リシャがこの国に長く滞在できるように手続きをする。用意しろ」
と告げた。
「え、ちが...そういう意味じゃ...」
拒否しようとしたリシャに被せて「大丈夫だ!面倒な手続きはこちらでやる」とだけ言ってそうそうに国王の元に行ってしまった。
「え、レナタ様励まそうと思ってただけなのに、全然聞いてくれないじゃん!もうヤダ!帰る!」
1人残されたレナタ様の部屋でリシャは大声を出した。