もうヤダ!帰る!(5)
ガタンッ
(ん?何か聞こえ.......)
「あ、リシャ様は少しお眠りになられているのでお気をつけください」
マミュウラ様がかなり小声で少し聞き取りづらかったが何とか聞こえた。
(俺...そうか...寝てたのか......)
「あぁ、そうか、はぁはぁ、部屋に戻ってたんだな」
(ん?ハルス様の声?部屋に戻ったんじゃ....)
「いえ、どうやら転移先がここだったようで、レナタ様とお部屋で話してらっしゃいました。」
「え!?全く....リシャは危機感が無さすぎる」
「全くです」
(え、なんか俺の悪口なの?ねぇ、悪口なの??起きれなくなっちゃったんだけど)
「まさか俺の探知魔法でも探れないほど制度が上がってるとは思いもしなかった」
「はい。私も驚きました。」
(え、次は褒められてるの?どっち?もういいや起きちゃえ!)
「んぅ....あっ、ハルス様いらしてたんですね、ごめんなさい少し眠ってしまって.....」
リシャは白々しい寝起きの演技をする。
「あ、すまない。起こしたか?」
ハルス様が少し焦ったように尋ねてくるので
「いえ、あまり寝すぎも良くないので」
と笑顔で答えた。
「それより、マミュウラ殿の様に走った訳では無いがかなり探したんだぞ」
少しほっぺを膨らませたハルス様がリシャをじっと見つめる。
「ん?探した?部屋に戻ったんじゃ...」
「あっ」
マミュウラ様が何かハッとしている。
「どういうことだ?」
ハルス様が少し怒ったようにマミュウラ様を見る。
「申し訳ありません。リシャ様を安心させるために少々嘘を...」
珍しくマミュウラ様が焦った顔をしている。とてもレアだ。
「そんなこと言いながらリシャと2人になりたかっただけなんじゃないのか?」
ハルス様も痛いところを突いてくる。
だが、マミュウラ様ももう平常心を取り戻し「いえ、そんなことはありませんよ」と悠々と答えて何やらバチバチしている。
(こ、これは起きるべきじゃなかったな......)
リシャは少し後悔した。
夕食の時間になり、王家の方々がいっせいに並ぶ中、レナタ様が1人いなかった。
それとな〜く、近くの侍女に聞いてみると、体調が優れないため部屋で食事をとるらしい。
絶対に俺のせいや〜ん!!と心の中で思いながら気まずい夕食が終わった。
夜になり、リシャはベットの上で考えているとどうしても悲しそうなレナタ様の顔が忘れられない。
(明日はもう帰るし、レナタ様とちゃんと話しないと...)
と考えているとストンと意識が落ちた。