聖女ですが中身は男です(4)
扉の外の大きな音に驚いた侍女が扉を開けると顔を夕日のように真っ赤に染めた第2王子様が落とした本を慌てたように拾っていた。
(げっ!そう言えばそろそろ魔法教育の時間だった……)
第2王子様と対照的に顔を真っ青にした侍女が
「あ……あぁ…魔法教育の時間…………し、失礼致しました!」
とそそくさと出ていった。
おい!とツッコミたくなるのをリシャは抑えて、顔を耳まで赤く染め俯いたままの第2王子様に
「御足労おかけして申し訳ございません。私はリシャ・スティードルと申します。第2王子様に魔法をご教授していただけるなんて夢のようですわ」
と微笑んだ。
すると第2王子様は勢いよく顔を上げ「い、いや、いきなり来て申し訳ありません。私は第2王子のハルス・エルドリエと申します。聖女殿に魔法を教えることほど名誉なことはありません」
と言いまた恥ずかしそうに俯いた。
(なんか………可愛いじゃねぇか。)
リシャの3歳上ではあるがこう見ると、とても愛らしい。
リシャは微笑み、
「第2王子様とは、年齢が近いのでお会いできるのをとても楽しみにしていました。今は先生ですが仲良くなれたらなと思っていたんです。」
と告げると第2王子様が遠慮がちに
「あ、あの……聖女殿、これからはよく会うことになるだろうから……その……第2王子では呼びにくくないですか?」
と尋ねてきた。
(え、名前で呼んで欲しいってことか……?でも自分から言うのはちょっとなぁ……)
「……そうですね。でしたら先生とお呼びしましょうか?」
リシャは自分で言いながら性格の悪い事をしたなと少し後悔したが
「あ、いや、俺はそんな……先生なんか……うぅ」
参った様子の第2王子を見ているとついいじめたくなる。
「ふふっ。ごめんなさい。冗談ですわ。ハルス様とお呼びしてもよろしいですか?」
と言うと第2王子は嬉しそうに
「ああ!もちろんだ!これからよろしく頼む!聖女殿!」と答えた。
するとリシャは少しムッとして
「不公平ですわ。」
と頬を膨らますとハルス様は困惑した様子で
「えっ、あ、申し訳ない。何か……問題があっただろうか?」
と尋ねてきた。
「私はハルス様を名前でお呼びするのにハルス様は私を名前では呼んで下さらないのですか?」
とリシャはわざと悲しげに俯いた。
するとハルス様は頬を少し赤らめ、
「り…リシャ殿」と気恥しそうに呼んだ。
「はい。よろしくお願い致しますね」
とリシャはにこやかに答えた。
今日は他にも王宮などの話をして結局、魔法の勉強は出来なかったのでまた明日教えに来てくれることになった。
初めは堅苦しい話し方だったハルス様はかなり打ち解けてくれたようでお互い気楽に話すようになった。
はっ!いや!ちょっと待てよ。
何やってんだよ俺!!!!!
何自分からルート開拓してんだよ!!!
いくらハルス様が可愛いからって調子に乗っていじめたりして!!
何より仲良くなりすぎじゃねぇか!!!
あ、いや、違う違う。友達として?友達だからな。友達と名前で呼びあったり親しく話すのは普通のことだからな!うん!
大丈夫だ!多分!
明らかにモテモテ効果が発揮しており自分に好意があるハルス様をあくまで友達だと自分に言い聞かせるリシャであった。