怖くなんてない(5)
「え〜ひど〜い」
リナールはまたニヤニヤしながらむくれた。
マミュウラ様はまた一層リナールを睨みつけた。
「マ、マミュウラ様…心配してくださるのは有難いのですが……」
リシャがマミュウラ様を説得しようとするとマミュウラ様はハッとして
「勝手をしてしまい申し訳ございません」
とリシャに頭を下げた。
「せ、責めてはないよ!心配してくれてありがとう!!」
リシャは慌てて感謝した。
「あの……」
ハルス様が口を開いた。
「へ、あっハルス様、どうかしましたか?」
「そこにいるのはリナールという悪魔ということですか……」
マミュウラ様があまりにもすんなりとリナールという存在を受け入れ警戒していたため、ハルス様がついてこれていないことにリシャは気づいてなかった。
「はい」
リシャがあたかも当たり前のように答えると、
「リシャ殿は悪魔と契約を交わしたということですか?」
(あ、悪魔と一緒にいれば普通そうだって思うよね…)
「違います。リシャ様は契約されておりません」
リシャが答える前にマミュウラ様が答えた。
「なぜ言いきれる?」ハルス様が首を傾げる。
「リシャ様には契約の紋がないからです」
マミュウラ様がはっきりと言いきった。
「なぜ国家でも知らないようなことを知っている」
ハルス様がマミュウラ様を疑うように見る。
リシャは2人を収める言葉が見つからず2人を交互に見る。
「あはははは、この子鋭いのか鈍感なのか分かんないや〜。ルシエラ君はリシャちゃんと会ってから詰めが甘くなったよね〜」
さっきまでいい感じに黙っていたリナールが2人を見て笑いだした。
「ちょっと、リナール何言ってるの」
リシャはリナールを叱った。
(ただでさえハルス様とマミュウラ様がギスギスしてるのに……)
「ふ〜ん。じゃあ、鈍感な2人に面白そうだからおしえてあげる〜。ルシエラ君が俺をすんなり認識したり悪魔の契約を知ってるのもルシエラ君が魔族だからだよ。」
楽しそうに笑うリナールと対照的にマミュウラ様は真っ青な顔をしていた。