俺だってできる(5)
「んん……」
リシャはゆっくりと目を開いた。
今はちゃんと見えるし、拘束もされていない。
「……ここは…………」
辺りを見渡すが全く見覚えがない場所だ。
いや、正確には、今世では見たことがない。
障子に囲まれた畳張りの部屋だった。
「目が覚めたんだね」
さっきと同じ声の男が近づいてきた。
「お………お…前……………」
近づいてきた男を見てリシャは驚いた。
嫌なほど見覚えのある顔だった。
「お前?酷いな〜お兄ちゃんだろ?」
男は心底楽しそうにリシャに微笑む。
リシャは一人っ子だ。兄弟はいない。今世では。
「お……俺に兄弟はいねぇよ…」
リシャは動揺しながらも男を睨みつけた。
「嘘ついたってダメだよ」
男はリシャに笑いかける。
(なんだコイツ。なんで兄貴に似てんだよ。俺の何を知ってんだよ。)
リシャは混乱したが、こんな所にいるはずのない兄を名乗る男を睨み続けた。
「あーあ、やっぱりダメ?」
男は残念そうにリシャに話しかける。
なんのことか分からずリシャが睨み続けると、
「はぁ、ダメかぁ……」
男は溜息をつき何かモヤのようなものが部屋全体を覆った。
「ま…ほう………?」
男は変化魔法を使っていたようだった。
「お兄ちゃんの方がいいかと思ったんだけど、お兄ちゃんとは仲が悪かったのか…」
男は独りでブツブツ反省しているようだった。
(にしても、イケメンだ。イケメンではあるが、何だこの気配………なにか……人じゃない………?)
「えっ!もうバレちゃったの!?」
ブツブツ言っていたのにいきなりリシャに振り向き男は大声を出した。
(は?俺声出してねぇよな?)
「ごめんねぇ。俺、人間じゃないし、心の声も聞こえちゃうんだよね。」
「は?人間じゃない…?」
「俺は悪魔。リナールって呼んでね」
(は?悪魔も俺に惚れんの?)
リシャが謎に思っていると
「え!なんでわかったの?俺そんなわかりやすいほうじゃないと思うんだけど」
リナールが怪訝な顔をした。
「え……あっ………なんとなく!なんとなくだよ!てか、部屋に戻せよ!」
リシャが話をずらすと
「ん〜そうだね。でも、あの花、忘れてね?」
男はリシャのおでこにそっと触れた。
「ちょっと聖女ちゃんどこ行ってたの〜?」
「リシャ様!本当に心配致しました!!」
「どこにもいなくて本当にびっくりしたんだぞ!」
レイオス様にマミュウラ様、ハルス様がいきなり部屋に駆け込んできた。
「え、あ………」
3人の勢いに圧倒されうまく説明できず
(どこか違う場所へ……)
そう願った途端リシャが一瞬ひかり、いつもの魔法練習場所に来ていた。
「え!?あれ!?!???なんで!?なんか、できた!!!!俺も!!!魔法が使えるぞ!!!!俺だってできる!!!!」
リシャは歓喜のあまり大声で叫んだ。