俺だってできる(1)
「あ、この場所のことも魔法練習のこともみんな俺たちだけの秘密ね?」
レイオス様はいたずらっぽくリシャに笑いかけた。
「えっ、マミュウラ様やハルス様にもですか?」
「もちろん!特に、あの2人は連れてこないでね」
「で、でも聞かれたら誤魔化せる自信がないです………」
リシャが不安そうに俯く。
「だいじょーぶ!あの2人は聖女ちゃんが可愛く「ないしょっ」って言えばそれ以上は突っ込んでこないから」
そうは言ってもこの状況じゃ無理だろ………
レイオス様は、部屋にはマミュウラ様とハルス様が居るだろうからと言って部屋の近くまで来て逃げるように去っていった。
リシャが部屋に入ると不安そうな顔をしたハルス様と怒りにも似た表情をしたマミュウラ様が一斉にリシャを見た。
リシャを見るなりマミュウラ様はリシャの前で片膝をつき、リシャの右手を大切そうにそっと両手で包んだ。
「とても………心配いたしました。」
マミュウラ様は少し悲しそうな愛しそうな目をしていた。
それを見たハルス様が少しムッとしてリシャの左手をキュッと握り、
「俺も……」と少しすねたような表情をしていた。
(ひぇぇぇぇええ……両手に花……?いや、両手にイケメンか……?)
などとリシャが考えていると
「朝早くからどこへ行ってらしたのですか?」
マミュウラ様は手を離すことなく立ち上がった。
「え……えっと………ちょっと散歩に…」
「レイオス殿とか?」
次はハルス様が切り込んできた。
(なんでバレてるんだよー!)
「は…はい」
「転移魔法を使ってまで何を話したのですか」
(なんでマミュウラ様こんな突っ込んでくるんだよ!?!?いつもニコニコしてるくせに!!この!腹黒野郎!!!)
リシャが返答に困っていると
「俺が魔法教育係を外されたのと関係あるんじゃないの?」
いつもは頼りないハルス様まで鋭く追い打ちをかけてくる。
レイオス様から言われた通りに
「な………ないしょっ……………………………です」
とリシャは不安そうに2人を見上げる。
(えっ?不発??レイオス様!どういうこと!?質問は来ないけど2人とも俺から顔背けて何も言わないんだけど!?逆に怖い!!誤魔化されないぞってこと!??)
「……あ、あの…」
沈黙に耐えきれずリシャが声を上げると
「分かった」
ハルス様が顔を背けたままで答えた。
「かわりに、俺とも散歩に行って?」
と顔を赤らめながらリシャに強請った。
(なぜそうなったのかは謎だが誤魔化せたのか…?)
リシャは笑顔で
「もちろんです!」
と答えた。
「それでは護衛しますね」
とマミュウラ様が言った。
どうやらマミュウラ様も散歩に混ざるようだ。
「散歩だけなのに護衛いるのかな」
とハルス様がマミュウラ様に聞こえる程度の声で話すと
「万が一ということもありますから」
とマミュウラ様が爽やかに答えた。
(何故だ。2人ともすごくにこやかに話してるのに空気が重すぎる………)
その後すぐ、その重い空気のまま3人で中庭を散歩して解散した。
後日、魔法教育の時間にマミュウラ様とハルス様を撒くのに苦労するリシャであった。