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死後のエンタメ転生記~イイねを稼いで天国に行こう~

作者: RYU39

お読み頂き、ありがとうございます。

なろうデビュー2作目です。

今作は、趣味全開で書きましたが、どこが、という無粋な疑問はなしでお願いします。


タイトル変更しました

俺のエンタメ転生記→死後のエンタメ転生記

 ガシッ

 体を拘束されて目が覚める。

 「ここは……どこだ?」

 辺りを見渡す。水平線、上下する地面、周りにいる船。どうも船団を組んだ船の上らしい。船?いや艦だな。平らな甲板に並んだ飛行機、甲板の端に艦橋。うん、空母だ。そして俺は……ああ、艦上爆撃機に吊られた爆弾か。ついに生き物ですらなくなっちまったか、って隣の飛行機は帝国海軍の艦上爆撃機、彗星じゃん!マジかー、いやぁ転生してみるもんだ!それに作業員のお姉さん、何か違和感あると思ったら獣人?その狐しっぽさわらして!手はないけど!ファンタジーでミリタリーとか、ここは天国なのか……!!

 一人で盛り上がっていると、頭?の中であいつの声が響く。

 「やぁワタル、目が覚めたかい?現状は理解できてるようだね。今回はちょっとひねりをいれてみたんだよ。ほら、いつもは頑張って少しでも長く生き延びてね、ていうミッションが多いけど最近マンネリ気味でイPの伸び悪いでしょ?だから今回は、頑張って敵艦に当たってねというのがミッションさ。ちょっと大がかりな分、もし外れたらペナルティとして海底で朽ち果てるまで五十年ほど過ごしてもらうから。今回は君の体に目がないから私の許可したドローンの映像を見せてあげるのと、サービスで周りの空気を操作して落下コースをある程度制御出来る様にしてあげるから、頑張ってね!」

 言いたい事を話したら、さっさと消えてしまった。いつもの事とはいえ、質問あったらどうすんのさ。まあ答えてはくれないだろうけど。などとやってる間に我が艦爆は発艦、機体の下から眺める発艦の大迫力にテンション急上昇、上空からさっき飛び立った母艦を振り返ってさらにテンション上昇「信濃じゃん!ちょっ!上空をもっかい通って!お願い!プリーズ!」

 艦も転生するのかね?今度あいつに聞いてみよう。


 敵艦上空まではまだ時間がかかるので、自己紹介しておこう。俺は久遠 転生(クオン ワタル)、享年三十一歳だ。何で冒頭の事になってしまったのか、少し長くなるが説明しないとわからないと思うので聞いてほしい。

 俺は訳あって田舎の会社を辞めて東京で働いてたんだ。ただいわゆるブラック企業というやつで、三十連勤の長時間労働の末に体調崩して三日休んだらくびになってた。次の仕事を探すも決まらず、貯金も尽きて空腹のあまり食い逃げし、周りも見ずに道路を渡ろうとしてトラックに轢かれて死んだ……はずだったんだけど、気付くと真っ白な世界にいて、あいつに出会ったんだ。

 そう、俺は仰向けになっていて、目を開くとまず布の(ひさし)?が見えた。頭の下には暖かくて弾力のある何か、周囲を見ようともぞもぞ動いていると、庇の上から「あ、気がついたかい?」と女性の顔が現れた。

 あわてて体を起こして振り返ると、そこにはいかにもギリシャ神話の女神様っていう感じの白い服を着た二十代後半と思われる美女が微笑んでいた。ああ、この方に膝枕してもらってたのかと理解したところでふと気付く。あの庇は立派なお胸様でしたか。ちっ。

 美女は立ち上がると、こちらに手を伸ばし「立てるかい?」と聞いてきたので、彼女の手を掴もうとした瞬間、

ぽん!

気の抜けた音と軽く煙が出て、目の前の美女は、中学生位の少女になっていた。

 「キャハハハ!」少女は腹を抱えて笑っている。

 突然の事態に、手を伸ばしたまま固まる俺。こいつから見れば、相当間抜け面していたに違いない。

 「それそれ、そのリアクションと表情、それが欲しいんだよ!」

 何?こいつ何言っているんだ?俺を指さして、更に大笑いする少女を観察する。

 ピンクブロンドの肩まで髪と、少しつり目気味の赤く大きな瞳、間違いなく美少女と言われる顔立ちに、完全無欠の無凸ボディ、そう、無凸だ。何でゆったりした服の上から判るのか分からないけど間違いない。さっきの美女より俺好m……げふんげふん。

 「おい、お前は誰だ、そしてなんなんだここは?それが欲しいってどういう事なんだ?」

 そう問う俺に、急に真顔に戻った少女が答える。

 「ああそうか、私が分からないか……。まあ今はいいか。私はエンマ、ここで管理官をしている。それでは順番に説明しよう……」

 まずここは生者のいる地上に対して天界と言われる場所にある、天国行きと地獄行きに振り分けられる死者の待機部屋で、俺を担当する管理官のエンマから生命点数(ライフポイント)マイナス評価で地獄行きが言い渡された。生命点数とは、善行をプラス、悪行をマイナスとして人の人生を評価するものらしい。食い逃げがなければ僅かにプラスだったそうで、ショックで固まってしまったが話には続きがあった。

 「ところがさ、地獄にも建物や設備の老朽化とか、職員の福利厚生施設の不足とかいろいろ問題があるんだ。けど今の場所は建て替えや拡張の為の余地がなくてね、少し離れた場所に移転中なんだ……」

 天国は魂が休養した後、輪廻転生の輪の中に戻っていくので受け入れ可能人数は常に余裕があるが、地獄は罪の重さによっては数百年滞在させる者もおり、また老朽化で修理不能の設備が出始めている事も相まって現在受け入れ可能人数が減っており、移転完了までの対策として、地獄行きの者の内、生命点数のマイナス評価の少ない者については、移転作業に従事したり、娯楽の少ないこの世界にエンターテイメントを提供してもらうことで地獄行きを免除するエンタメ刑というシステムがあるそうだ。

 移転作業従事者は作業に従事した日数を生命点数に変換して加点することで、エンタメ刑はドローンと呼ばれる不可視の飛行カメラで撮影した動画を配信し、もらえたイイねポイント(略してイP)を貯め、これを生命点数に変換して加点することでマイナス評価を相殺するらしい。これで分かっただろ、さっきのも撮影されていたんだ。ちなみに移転作業従事者は移転先に仮設されたプレハブ住宅に、エンタメ刑になった者は、待機部屋の奥にある楽屋と呼ばれる大部屋に滞在し、担当する管理官の差配により冒頭の俺のようにお仕事に励むことになるわけだ。

 また、このイPは管理官のボーナス査定にも影響する様なので、管理官はエンタメ刑を適用する者を必死で探すらしい。しかしボーナスとか福利厚生施設とか、地獄より生前の会社の方が地獄のように感じるのはなぜだろう……。


 まあ、そんなこんなで敵艦上空です。当機(彗星)は艦上爆撃機であり、急降下爆撃を敢行するため急降下を始め、やがて爆弾()は切り離されます。このまま機長を信じても良いのですが外れると五十年ほど海底です。そんなのはいやなのでドローンの映像を確認すると、予測着弾地点のマーカーが出ていたので、これ幸いと目標の大型艦に向かって周囲の空気操作を試みたところマーカーはあらぬ方向にふっとんでしまい、大慌てで逆方向に動かすと動かしすぎて目標を見失い、パニックになって訳も分からず操作しているうちに無事(?)敵艦に着弾、撃沈はできなかったものの、俺は待機部屋に帰還できた。

 「おかえり、ワタル!君はやっぱり最高だよ!」

 エンマの第一声はこれである。帰ってくるなり、最高にご機嫌なエンマに種明かしをされる。いわゆるドッキリというやつで、実は因果律が操作されており、何をやろうが確実に着弾したそうだ。喜んだり慌てふためく俺の映像をCG?で合成した動画を見せられ、羞恥に悶えていてふと気付く「今も撮影されている……」

 今回配信された動画はずいぶんと好評で、たくさんのイPを頂けた。また今回は俺のテンションを上げるために、俺の記憶を元に構築した世界だそうだ(創造神様に企画書をプレゼンして、採用されると撮影用セットを用意してくれる。保証金としてそれなりのイPが必要だそうだから、気軽に使えるものではないようだ)。

 今度は大和とか、赤城、加賀とか出てくる世界で仕事させてくれないかな。乗組員はエルフのお姉さんで、水兵服の無凸ボディとか萌e……げふんげふん。

 し、しかし、これまでずいぶん仕事もこなしてきたよな。猫VS鼠とか、VSカナリアとか、猫に敵うわけないだろ。アニメじゃあるまいし瞬殺されたよ。ハブVSマングースなんてのもあったな。中身人間のマングースが勝てるかよ。用意できなかった!とか言ってハブのかわりにコブラ出して来やがるし。まあおかげでイPは稼げたけどな。そろそろ食い逃げの減点くらい相殺できていると思うんだけど、まだ天国へのお誘いがない。ちょっとエンマに聞いてみないといけないな。あ、でも天国行くとエンマとお別れになるよな。なんだかんだ言ってもあいつ可愛いし無凸だし、腹立つことも言うけど話してて俺も楽しいからな。もうちょっと、うん、もうちょっとの間だけ気付かないふりしてこの仕事を続けよう。あ、今度あいつとのデート企画を提案してみようかな。最後に俺が虚仮にされればいいだろ。しかし何だろな、この気持ち。俺とエンマ、ずっと前から知っているような……。


(エンマ視点)

 管理官事務室で事務仕事をしていると、親友のアシュラが声をかけてきた。

 「ねえ、エンマぁ、ワタルってもう天国へ十回以上行けるほどイP稼いでいるのにさぁ、何で天国へ行かせてあげないわけ?同僚として、というよりはあんたの親友として凄く気になるんだけど。」

私はちょっと躊躇したが、この子(アシュラ)だったらいいか、と思い、本心を話す。

 「だって天国へ行かせたら私の手から離れてしまうじゃないか。私は……(ワタル)を手放したくない。ずっとそばにいてほしい。でもマイナス評価を相殺してしまうと天国に行かせなくてはいけなくなる。だからイPを生命点数に変換せずに積み立てているんだ。」

「ねぇ、ワタルって何者なの?ずいぶんご執心だけど。」

「……三百年ほど前に惚れた相手、かな。あの時も罪人と管理官で、相思相愛だったけど恋愛は御法度でしょ。贖罪を終えた彼を見送るしかなかったの。ただその時に彼は無理矢理時間を作って、本来は重罪人に使うイレズミ魔法で自分の魂にクオンワタルの銘とエンマと会えという後生への指示を刻ませてくれた。指示はちょっと薄れてる感じはあるけど、彼は久遠 転生(クオン ワタル)として、あの時の姿のまま私の元に帰って来てくれた。もう絶対手放す訳にはいかないんだ。」

「でもさぁ、このままって訳にもいかんでしょ?」

アシュラの疑問はもっともだが、考えなしな訳はない。

「いや、今が最高のチャンスだからこんなことやってんだよ。地獄の移転に伴う職員の増員で、募集を天国行きの連中からも行うって話があったでしょ。だからぎりぎりまでイPを稼いで、職員募集開始直後に生命点数に変換してやれば、減点は相殺されて罪人ではなくなるし、残りの点数で職員採用基準の生命点数はクリヤできると思うんだよ。その時は私も管理官として推薦するつもりだし。職員と罪人の恋愛は規則で禁止されているけど、職員同士は自由でしょ。

 彼にとって今はまだ迷惑かもしれないけど、ガンガンイP稼げるようにがんばるんだ。あ、企画でなら彼とデートしてもいいのかな。最後にドッキリの落ちをつけとけば何も言われないだろうし。」

 「あぁ、納得した。それならあたしも協力してあげるからさ、がんばんなよ。」

 「うん、ありがと!」




 三年後、俺は地獄の設備保全担当職員として働いていた。地獄は24時間営業なので、三勤一休の三交代シフトだ。慣れるまでは少ししんどかったが、残業が月10時間を超えると上司が始末書を書かされるほど毎日がノー残業デーなので、生前の事を思えば何て事はない。元々天界には曜日の概念はないし、有給休暇もとれる。休みの日にはデートにだって行ける。そう、生前は生きた年数=彼女いない歴だったが、今は同棲中の恋人(エンマ)がいるんだ。だからもう地上に未練はない。

 あ、エンタメ刑は終わったけど、休日を使って動画製作はまだやっているんだ。実際一回やめたんだけど、エンマの動画は好評で復活を期待する声が大きかったんだ。期待されるのも嬉しいし、ボーナス増やして結婚資金を貯めないといけないしな。

 そういえば、この間エンマの親友(アシュラ)が家に来てくれた時は驚いたよ。俺が最初に目覚めた時の女神様が来たんだから。エンマが驚いている俺を見て笑いながら、モデルにしたのを教えてくれたんだけど、エンマがお茶を淹れに台所へ行くと、彼女(アシュラ)は小声で聞いてきたんだ。

 「目が覚めて、あたしの姿を見たとき、胸を見て舌打ちしたよね?まあエンマ見れば分かるけど、これは魂に刻まれた無凸好きってやつ?」

 返答に困ってる俺を見て、ケラケラ笑うアシュラ。お茶を持って戻ってきたエンマは怪訝な顔して見てたよ。けっこう気にしてる事だから、誤魔化すの大変だったんだからな。

 まあいろいろあるけど、恋人(エンマ)が一緒だから、何をするのも楽しめる。

 俺たちの、地獄での天国生活(ハッピーライフ)は始まったばかりだ。

 





最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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